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元気な精子を判別するAIを開発 オリンパスと慈恵会医大
良好な精子(黄緑色)は速い速度で直進し、不良な精子(茶色)は動きが鈍く蛇行する(画像:オリンパスの発表資料より)[写真拡大]
オリンパス(東京都新宿区)は11日、不妊に悩むカップルが体外受精をする際、数多くの精子の中から活動的な精子1個を判別するAIを開発したと発表した。東京慈恵会医科大学(東京都港区)などとの共同研究の成果で、同社は、技術が実用化されれば、顕微鏡下で受精作業を行う胚培養士の負担軽減や作業の質の向上につながるとしている。
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近年、不妊治療の進歩により世界中で治療を受ける人が増えている。日本でも、2016年に体外受精など生殖補助医療の件数が約45万件に上り、約5万4000人が体外受精によって出生するなど広く普及している。
特に増加しているのは、顕微鏡を見ながら卵子に精子1個を注入する顕微授精。卵子か精子の何らかの原因で受精しにくい受精障害や、精子の数が少なかったり運動率が低かったりする男性不妊に有効とされている。
しかし、体外受精は手作業に頼る部分が多いのが実情で、受精を行う際には、数多くの精子の中から活動的で最適と思われる1個を判別し、迅速に作業しなければならない。また、どれが最適なのかを判別する明確な基準はなく、知識や経験に委ねられている。
このため、医師の指導のもと実際に作業にあたる胚培養士の負担軽減や技術の均一化が課題となっている。
オリンパスと慈恵会医大産婦人科学講座などは、今年3月から精子を判別するAIの開発に向けた共同研究を開始。1066個の精子の画像をAIに学習させることで、AIが動画内の精子を認識し、運動性能を算出することが可能になった。これによって、リアルタイムで活発に活動する精子を判別できるようになったという。
今後は、精子の頭部や頸部の形態をAIに学習させ、2020年12月までに活動量と形態をもとに妊娠に最適な精子を判別する「精子判別補助AI」を開発。AIを搭載した顕微鏡を用いた受精システムの実現を目指す。
オリンパスは、「AIを使った顕微授精の質向上によって、子供を持ちたいと願う世界中の人たちの精神的、肉体的、経済的負担を軽減したい」としている。
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