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被選挙人(立候補者)資格を考える
摩訶不思議としか言いようのない事実を知った。例えばこんな具合である。
(I)4月の東京都(以下、同じ)新宿区の区議選に立候補した「NHKから国民を守る党(N国党)」公認の人物が、当選後の9月になって「区内に居住していたとは認めがたい」という理由で議席を剥奪された。
(II)5月の足立区議選挙で、墨田区在住の女性(N国党公認)が立候補。5548票を獲得し上位当選圏に入った。だが投票・開票後に区の選挙管理委員会は、集票を無効と判断した。
(III)8月の日の出町の町議会議員選挙で、33票を獲得。が、投開票後「町内に住んでいない」という判断から獲得票は無効となった。この人物の立候補がなければ、無投票/選挙なしだった。
等々である。公職選挙法では「地方自治体の議員選挙に立候補するには、自治体に少なくても3カ月は居住していることが被選挙人の条件となる」旨が定められている。
だとすれば、「II」は何故に起こったのか。また「I」「III」でも記した様に、投開票後ではなく事前の審査で立候補自体を止められなかったのか。筆者の地元、所沢市の選管に「何故」と問うた。返ってきた答えは9月29日の産経新聞が報じた、富山大学の神山智美准教授の発言内容を「オウム返し」する範囲に限られた。神山氏はこんな風に語っている。
「公選法では立候補者の届け出書類を(形式的に)審査しなければならないとしているが、立候補者が被選挙権を有するかどうかを審査する権限はない。選挙期日前に立候補資格の有無を公にすることは、“選挙の自由公正を害し被選挙人の選挙運動を著しく妨害する”といった判例もある。選管は届け出書を鵜呑みにする以外にないのが現状」。
だが神山氏も指摘しているように、「そうした枠組みの限り、選挙人の意思が無効になる危惧はなくならない」。
同感である。が、としても前記「II」は理解に苦しむ。「I」の場合は「実質3カ月間の居住」の有無を巡り、立候補者がN国党を背景に新宿選管と争う構えをみせている。しかしそもそも公選法(自治体選管に与えられた権限)自体がおかしい。
「貴重な1票」を勘案すれば、話は逆。まずは被選挙人の資格の有無を判断し公にして、選挙を実施するのが筋であろう。
衆議院議員選挙(被選挙人の要件:25歳以上)・参議院議員選挙(30歳以上)・都道府県知事選挙.(30歳以上)・市区町村選挙(25歳以上)に「居住実態基準」はない。
「国会議員選挙では党勢を背景にいわゆる地元とは異なる“落下傘部隊”は如何なものか」という議論はある。が、これには微妙な問題が伴う。それでなくても「地元利益最優先の国会議員」の在り方に「?」が長らく投げかけられているからだ。
だがいずれにしても「重い1票」を無駄にしてしまうことだけは、改革されて然るべきである。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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