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空腹が味覚を変化させる神経上の基盤を発見 生理研などの研究
視床下部の摂食促進神経てあるAgRP神経を起点とした神経ネットワークにより空腹時に味覚が調節される。(画像:生理学研究所発表資料より)[写真拡大]
空腹は最高の調味料であると古来言われる。空腹が味覚を変化させるという事実は、科学的観測からも、そして経験的知見からも古くから知られているのだが、それがどのような生理的機序によって成り立つのかは未知の問題であった。しかし今回、東京大学と生理学研究所(生理研)の共同研究グループは、それを解明したと発表した。
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研究に参加しているのは、生理学研究所の中島健一朗准教授と傅欧研究員、吉村由美子教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の三坂巧准教授、東原和成教授の研究グループ。
摂食はあらゆる動物にとってもっとも重要な行動の一つである。そして食物の価値決定を行う味覚という機能は、栄養豊富な食物の摂取を推進したり、有害成分を含むものを忌避させたりする機能を担っている。
しかし味覚による判断は常に一定ではない。空腹の時、味の好みなどが通常時とは異なることは経験的に知り得ることであるし、また、マウスやショウジョウバエなどヒト以外の種においても同じ現象が見られる。それは何故なのだろうか。
近年の研究で、脳基底部の視床下部弓状核のAgRPニューロンが空腹に際して活性化し、食欲を生み出すことが明らかになってきている。それを踏まえ、研究グループはマウスを用いて、AgRPニューロンが空腹時の味覚変化に関わっているかどうかを調べた。
空腹なマウスをリック評価試験によって測定すると、マウスはあまり甘くない溶液であってもリック回数(舐める回数)が増大した。いっぽう、苦い溶液を与えた場合でも、通常はリック回数が減少するのだが、空腹状態だとリック回数が高い状態が維持された。
つまり、空腹は甘味などへの嗜好をさらに高める一方で、不快な味への鈍麻をも生じさせるわけである。
さて、今度はオプトジェネティクスという方法でAgRPニューロンを活性状態に置いたマウスを用いて実験したところ、絶食状態のマウスと同じ味覚の変化が観察された。さらに詳細な検証を行った結果、空腹時の味覚変化は、視床下部AgRPニューロンを起点とした神経ネットワークが調節していることが判明したのである。
研究の詳細は、Nature Communicationsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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