吉野彰氏ら3名にノーベル化学賞、リチウムイオン電池の開発に多大な貢献

2019年10月10日 08:44

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 スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2019年度のノーベル化学賞を、旭化成の吉野彰名誉フェローら3人に授与すると発表した。なお、共同受賞者は米テキサス大学オースティン校教授のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大学のマイケル・ウィッティンガム教授である。

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 授賞理由は、「リチウムイオン電池の開発」である。現在IT機器やEV、再生可能エネルギー用蓄電装置などに用いられているリチウムイオン電池の実用化は、上記の3人による功績が大きい。

 まず始めに、リチウムイオン電池の特徴である「インターカレーション型」の反応が電池として使えることを示したのが、ウィッティガム教授である。

 そして、そのコンセプトをもとに正極材として「コバルト酸リチウム」が優れた性能を持つことをグッドイナフ教授が見出し、1980年に発表した。当時は、金属酸化物は電池の正極として向かないと考える人が多かったため、コバルト酸リチウムという材料はこの分野の中では盲点とされていた。

 そしてその成果に目をつけ、コバルト酸リチウムに合う負極材料を探し出して、リチウムイオン電池の実用化につなげたのが吉野氏である。負極に炭素材料を採用し、現在のリチウムイオン電池の原型が当時の研究開発の中で完成した。

 今もなお、リチウムイオン電池の高性能化を目指して様々な材料の探索が行われているものの、基本的には当時の原型と大きく変わるものではない。

 吉野氏は正極と対応する負極だけでなく、セパレーターや電解液といった構成部材においてもリチウムイオン電池の基礎を確立した。それらの構成部材は従来の電池のものをそのまま適用することはできず、新たな材料を手探りで探索された末に現在のリチウムイオン電池がある。

 吉野氏が開発したリチウムイオン電池の原型は、1991年にソニーが世界に先駆けて商品化を行った。ソニーの電池はノートパソコンや携帯電話に採用され人々の生活を大きく変えた。

 そして現在では、リチウムイオン電池はEVの実用化に欠かせないキーデバイスとなり、自動車業界を一変させようとしている。また、再生可能エネルギーの普及における動きの中でも、発電量が安定しにくいといった課題を解決するための蓄電装置としてリチウムイオン電池が注目されている。

 日本人のノーベル賞受賞者は27人目、ノーベル化学賞は8人目となる。

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