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LPガスを高感度で検知する超分子センサーを開発 東大などの研究
研究で用いた歯車状両親媒性分子(GSA)の化学構造式と六分子のGSAが、水中で集合化して形成するナノキューブと、ゲスト分子の内包の模式図。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]
液化石油ガス(LPガス)を、その爆発下限界以下の濃度で検出することのできるセンサーを東京大学の研究グループが開発した。研究に携わったのは、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の平岡秀一教授、小島達央講師、大学院理学系研究科化学専攻 博士課程3年生のYi-Yang Zhan氏らの参加する共同研究グループ。
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非常に基礎的なことから説明すると、液化石油ガスとは一般にはプロパンガスと通称されるものである。なぜプロパンガスというかと言えば、プロパンを主成分とするからだが、工業用のLPガスはブタンが主体であり、厳密に言えばプロパンだけのガスではない。
LPガスの爆発下限界は0.2体積%である。今回開発されたセンサーは、それを下回る0.1体積%でLPガスを認識することに成功したという。さらに、応答速度も30秒以下であった。
官能基を持たない分子を選択的に認識して、さらにその情報を外部に発信する能力を持った分子センサーを開発するための設計戦略は、これまで確立されていなかった。今回、研究グループは、学習院大学の研究グループと共同で、LPガスを選択的に取り込み、それによって蛍光強度が増大する分子センサーを開発した。
この分子センサーはナノキューブであり、紫外線を照射すると蛍光を発する性質を持つのだが、LPガスのある状態で同じく紫外線を照射すると、蛍光強度が3.9倍に増大する。さらに、蛍光強度はLPガスの濃度の対数と直線関係になり、ガスの濃度を定量化することもできるという。
今回の研究で、歯車状の分子を噛み合わせてカプセル状の分子を作ると、認識部位と発信機が一体となった、高い感度と素早い応答速度を実現した分子センサーが作れることが明らかになった。今後、同様の設計戦略から多様な標的分子のセンサーを開発できるようになることが期待できるという。
なお、研究の詳細は、CommunicationsChemistryに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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