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金融機関にも「プロ経営者」が求められる時代!?
8月3日にブルームバーグが配信した<地元で集めた金は地元で生かす 「地道」で最高益、広島市信用組合(以下、広島信組)の経営術>は、いまだからこそ是非に金融機関の経営者に読んで頂きたい。「一見非効率こそ、効率化への道標(みちしるべ)」という懐かしい「経験則」を思い返させてくれた。
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広島信組の前3月期末の預金残高は6454億円、対して貸出残高5624億円。預貸率約87%。取り扱い金融商品は概ね「融資」にフォーカスされている。コア業務純益は94億8500万円と17期連続の過去最高益更新。この時期、何故そんなことが可能なのか。記事は2005年理事長に就任した山本明弘氏の「一貫した経営姿勢がその背景」と指摘している。それは例えばこんな具合だ。
★朝9時過ぎ。役員・本支店長・営業担当者が、菓子箱と広島信組のディスクロージャー誌を携え一斉に顧客回りに出かける。「お陰様で〇〇期連続の最高益。社長の協力のおかげ」等々と語りかけながら、3週間で1万6500軒余りを回る。「(顧客との)信頼関係構築のためだ」という。
が、広島信組を知る地銀関係者は「と同時に遣り取りの中で、(予備軍を含めた)融資先の現状・信用調査をやっている」とした
★そうした「信頼関係」「信用調査」の下地が整っているから、「リスク分散のために1軒当たり法定上限の1割余:10億円以内の(中小零細企業向け)融資が、地銀平均比1.5%高の金利水準で行える」。そして「万が一の不良債権化した焦げ付きは、バルクセール(一括売却)が実施できる(前期の不良債権比率は2・29%)」。
件の地銀関係者は「絶え間ない接触が(融資先の納得ずくで)そうした施策を可能にしている」とする。
こうした配信に接し、バブル期に頻繁に取材の機会を得た御仁を思い出した。当時の城南信金の理事長だった真壁実氏である。「城南信金中興の祖」と言われた小原鉄五郎氏の「秘蔵っ子」と語られていた人物。理事長・会長退任後「ワンマン経営の弊害」なる指摘を浴びせられたこともあるが、あえて記す。
足繁く通ったのは信金・信組の「第2地銀化」が急展開する中、信金トップだった城南信金は同調する気配を全くみせなかった。執拗に「何故」を繰り返す私に真壁氏は、こう言い放った。
「銀行に成り下がるつもりなど、さらさらない。銀行が“銀”なら信金は“金”だ。金が銀に成り下がる必要がどこにある。信金はベンチャービジネスや中小零細企業の面倒をみる企業の小学校だ。いろいろな企業が我が庭から巣立ち立派に成長していく。これが名門信金(小学校)の誇りだ。うちは地場産業の黒子に徹する」。妙に納得させられた。
1994年11月に再度、取材をかけたことがある。「懸賞金付き定期預金」のはしりとなった「城南夢付き定期預金スーパードリーム(1年定期)」を売り出した時だった。1口10万円。半年ごとの抽選で「1等:5万円(16本)」「2等:3万円(20本)」「3等:1万円(40本)」「4等:5000円(200本)」「5等:3000円(400本)」が当たるというものだった。
算盤を弾いた。「20億円売れたとして、賞金総額400万円。1年定期の通常金利に0.2%上乗せしたのと同じ負担。かなりキツイのじゃないか」と真壁氏に迫った。「顧客調査を念入りにした結果。まあ見ていなさい」と右から左にかわされた。
この商品は半年で1000億円を売り上げた。城南信金が95年9月中間期で、「業界初の預金残高3兆円突破」をもたらす原動力となった。
金融機関の経営者にも「プロ経営者」が不可欠なのではないだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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