キユーピー鳥栖工場AI導入、ベビーフード1センチ角ダイスポテトの良品選別に

2019年8月12日 08:33

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 ダイスポテトとは、ジャガイモの皮をむいて1センチ角の大きさに切ったものだ。残念なことだがその中に含まれる不良品は、ジャガイモの生育状況により安定しない。その中からベビーフードに使える「良品」を選別することは、かなり繊細な仕事だ。キューピーは、これをAIにより選別することで、コストと品質を安定させようとしているのだ。

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 不良品は、自動車産業などでは企業の運命を左右するほどの重大事だ。食料品であるダイスポテトでも品質保証は同じように大事だ。特に、ベビーフードでは赤ちゃんの健康を左右する問題なので重大だ。しかし、自動車とどこが違うのかというと、コストがどこにかかっているかということだ。自動車産業では完成車が不良であるとわかると、製造工程での加工レベルが高いため取り返しがつかず、倒産に至ることも考えられる。「エアバッグのタカタ」が良い例だ。

 一方、ダイスポテトの場合、材料のジャガイモから1センチ角に切った段階で不良となっても打撃が少ない。加工レベルが低いのと、材料費が相対的に低いためである。それよりも、検査選別する人件費がコストの面では負担となる。そこで、それをAIにより選別できるとなると、コスト的メリットは大きい。また、加工レベルが低いため、選別もやりやすい。

 キユーピー鳥栖工場では、AIによるダイスポテトの選別を導入することとしている。その際の考え方を、「不良品選別」ではなく「良品選別」に切り替えて成功しているようだ。材料の「歩留まり」を気にせず不良品を切り捨てられるので、出来る方法だ。また、そうすることでAIの「教師データ」が揃うこととなったようだ。不良品データが十分なく、良品データは大量にあったからだ。良品データを教師データとして選別することで、十分な成果が出せているものと推察できる。

 不良品とする判断基準は検査員によって違ってくるため、不良品の要素を固めるのが難しく、データの少なさも影響していたが、良品の要素を定めるほうが正確となっていたようだ。対象物の特性により教師データのとり方も違ってくるようだが、これから教師データの見方もいろいろな角度になってくるのであろう。

 キューピーでは、教師データとして当初参考にされた良品データは、ダイスポテトの数にして100万個程度であったそうだ。この教師データの数次第で、AIは正確な判断が出来るようになる。100万データ以上すぐに集まる対象物なら良いのだが、反社会組織の判別などいったいどのくらいのデータ数が必要であるのだろう。AIの実用性を判断するには、この教師データの数でみるのも1つの方策かも知れない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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