555mlジョッキと味の素の内蓋の穴数

2019年7月30日 13:23

印刷

「アサヒビールオリジナル東京2020オリンピック555mlジョッキ」(画像: アサヒビールの発表資料より)

「アサヒビールオリジナル東京2020オリンピック555mlジョッキ」(画像: アサヒビールの発表資料より)[写真拡大]

 7月27日早朝、FNNが「アルコール多様化時代を生き抜く“ジョッキ革命”」と題する記事を配信した。記事にもあるように私にも経験があるが、(居酒屋などで夏場の仕事帰りに)喉を潤しつつ飲む「まず、生ビールを一杯」は美味い。が、その後は酒肴に合わせて焼酎・日本酒に飲み物を変えていく。

【こちらも】ロッテのホカロンは、日本発の世界的発明品

 最近は特に表題にもある通り、アルコールも多様化している。ビールは「最初の一杯」に追いやられるケースが多くなっている。それでなくても、ビールの消費量が落ち込んでいる。そんな中で「ジョッキ革命」を起こしたのは、アサヒビール。

 ビール用のジョッキの容量に規定はない。「中ジョッキ:350-500ml」「大ジョッキ:700-800ml」がメドとされている。一汗二汗かいた後の生ビールは美味いが、「中ジョッキでは若干物足りない。といって大ジョッキでは腹が張って後の飲食を考えると重い」。

 そんな実態を見据えてアサヒビールが登場させたのが「555mlジョッキ」。来年の東京五輪の競技数は55。オリンピックのシンボルは「5つの輪」。双方をもじって「555mlジョッキ」を導入したのだという。

 狙いを記事中でアサヒビールの担当者が「ビールを飲んで頂くきっかけや機会を作っていきたい。555mlジョッキのような大容量のジョッキを使うことによって、1人あたりのビールの量を増やしていきたいという思い」が背景となったと語っている。

 実は私にはアサヒビールを生き返らせた「スーパードライ」に情けない話だが、私怨がある。スーパードライ発売に当たってアサヒビールは『アサヒビールの挑戦』なる一冊を世に問うた。宣伝効果もありバカ売れ。知人の著者はその印税でマイホームを購入した。

 そんなベストセラーと同じ時期に同じ出版社(日本能率協会)から、拙著「金融業はこう変わる」を上市した。辛うじて重版には至ったが、完敗。生来のかたくな者。以来、アサヒビールは口にしていない。が、今後は口にする。アサヒビールの担当者の555ml導入の素直な発言に感心したからである。

 また、こんな体験がある。まだ30歳前後で脚力もあり、自分を「いっぱしのジャーナリスト」と自負していた時期だった。ある先輩から「君は味の素の容器の内蓋の穴が、なんで倍以上になったのか知っているか」と問われた。

 調べて見た。1951年に発売された味の素の独特な容器(30g入り)の内蓋の穴は11。穴の直径は2.7mm。3振りで0.15-0.2gが出る仕様になっていた。それが、80g瓶が発売された62年には「34穴」「直径2.8mm」「3振り0.4g」に変わっていた。

 「多く使わせることで売り上げ増を目論んだ施策」とかたくなに思い込み、広報部に取材に乗り込んだ。「そういう問い合わせをよく頂く。ですが売り上げ増につながったという事実は全くない」と売上高推移を見せられ、軽くいなされた。

 いま私のような愚なるジャーナリストを宥めるためでもあるまいが、味の素は「容器の変遷」をHPにしかと記している。62年の容器穴増云々に関しては、「湿気による穴の目詰まりを防ぐため、中蓋の面積を増やし穴の数を増やした」と明記されている。

 味の素には「古希を迎えた老ジャーナリストはいま、ことの裏に真相ありと逸った若気の至りと反省している」と、この場を借りて申し上げておく。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事