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ベンチャー投資にはリスクが付き物なのもお忘れなく
M&Aの助言を手掛けるレコフの集計によると、2018年度の(国内)ベンチャー企業向け投資は1034件・投資総額は3457億円に達した。12年度に比べ件数で19倍強、投資額で15倍近くに及んだという。
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背景には超低金利時代がある。運用難に喘ぐ金融機関が投資会社に出資し、ベンチャーファンドが相次いで設立されている。国内最大のベンチャーキャピタル:ジャフコも19年内に機関投資家などから700-800億円を集め、新ファンドを設営するという。しばらくこうした流れは続いていくことが見込まれている。
また、こんな報道もある。「鉄道各社が人口減(利用者減)対策として、投資を含むベンチャー支援に注力している」。支援を介して沿線にベンチャー企業の拠点設営を図り、利用者減に歯止めをかけようという狙いだとされる。
時代がベンチャー支援の背中を押しているというわけだが、ベンチャー支援とりわけベンチャー投資にはリスクが伴う。報道に接していて、ある人物の顔を思い浮かべた。
故今原禎治氏(1926年―2013年)。野村證券常務からジャフコ(1973年4月、野村證券グループ各社や日本生命・旧三和銀行・旧三井銀行など57の金融機関の出資で設立。旧社名:日本合同ファイナンス)の社長に転じ、社員20名余りで赤字に苦しんでいたジャフコを僅か8年で店頭登録(現、ジャスダック市場)企業に成長させた人物である。
また本邦初の「(ベンチャー企業向け)投資ファンド」を組成した御仁としても知られる。初めて取材の機会を得たのは、店頭登録直後のことだった。爾来、何回かの取材を通して例えばこんな興味深い話を未だに記憶している。
「創業2年-3年の企業でも、売上高1億円-2億円に届いた企業でも、ジャフコは光るものがあれば付き合いを持つ。入り口は融資だったりリースだったり様々。係る企業には将来という“夢”と同時に、常に明日をも知れぬリスクが付きまとう。焦げ付きが出ない保証などどこにもない。だからベンチャー投資なのだ」
「プロ野球のスカウトは高校野球・大学野球を通して“金の卵”を発掘する。金の卵に対しては在学中にあれこれと援助をする。だが我々の仕事は野球にいそしむ小学生・中学生の中から“金の卵予備軍”を見つけ出し、バットやグローブの援助や野球そのものの指導もし、光る高校・大学球児予備軍を作り出すことだ。報酬はプロ野球に入団後“お世話になったお礼”と差し出される契約金の何割かだ」
果たして昨今のベンチャー投資の高まりの中には「リスクを取りに向かうのも不可欠」という覚悟があるのか。単に「運用難」故では、ベンチャー投資の果実は享受しえない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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