5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (12)

2019年7月20日 08:30

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 競合プレゼンに常勝する人には色々なタイプがいます。異常にキレっぷりのいい名案で勝つ人。KGIをコミットして勝つ人。とにかくコスパで勝つ人。さまざまな戦略でプレゼンに挑むワケですが、皆さんは、その常勝組の企画書を見たことがありますか。今日は企画書について、少しお話しします。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (11)

 博報堂時代の上司は、常勝クリエイティブディレクター(以下CD)の一人でした。コピーライター出身の戦略家です。机上には常時、超メンドくさそうな書籍が積まれていました。

 ある日、その上司と、某都市銀行のリブランディングの社内会議に出た時のことです。ストプラ、プロモ、PR、営業のベテランたちが険しい顔で集合していました。少し遅れて入室したCDに、戦略パートのさまざまな難問が一斉にぶち込まれました。しかし、CDはそれらを難なく捌き、会議室は早々とCDに制圧されていったのでした。スゲーな……こういう掌握の仕方もあるのか、と学んだものです。

■(14)あの人ならどうするか? で考えてみる。

 結局、その上司は、常に誰よりも深くしつこく、その案件を考え続けていたということです。誰にも依存せず、全方位で考え尽しているからこそ、質問の波状攻撃にも即答できる。そう、あの机上に積ん読されていた二次的資料で自身に探りを入れ、降りてくるものを待っていたというワケです。

 「コバヤシぃぃ、こんなのでイイかな……」

 そう言って上司から渡される企画書は、いつも散文詩でした。ワンパターンなのに勝ちます。私はある時から、その企画書を分析するようになり、写経するようになり、ついには、商品名をサクッと入れ替えたアレンジ企画書で、なんと、製薬会社と飲料会社の2件の競合に勝ってしまったのです。「あ、ラク。もう、これで行こっ」と思いましたね。

 散文詩型の長所は、頭で醸成中の「何か」をいったん表出させ、その文中で「戦略の過不足」を確認することができます。それに続く2枚目からは、一気にエグゼキューションパートまで書いていきます。

 こうして、今まで後回しにしていた企画書作成が「最初の作業」になりました。

 「○○さんなら、どう書くかな?」

 その人の文体をイメージして、なりきって書き始めると、不思議なもので勝手に筆が進んでいきます。ぜひ、試してみてください。

 私は、その後も常勝者の企画書と出合っては、オレ流にパワーアップさせ、企画書の幅を広げていきました。今も、それらをクライアントに応じて使い分けています。

 今は、さまざまなプレゼンや企画書の指南本が出ていますが、結局は、近くで活躍している人の「ナマ企画書」を拝むのが一番です。大切なことは、その企画書の「型」が生理的に合うかどうか。ご自身が「書き続けられそうな型」を見つけてください。

 真似して試してみたい企画書こそ、借りて、分析して、写経して、自分のモノにすること。これを続けていくうちに、必ず「オレ流」が降臨してきますから。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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