日本版「心電計」の生みの親、フクダ電子の足跡

2019年7月3日 12:30

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 100年に一度出るか出ないかとされる20世紀の大発明に、「レントゲン」と並び称される「心電計」がある。

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 心電計は1900年代前半、日本にも輸入品として持ち込まれていた。だが高価、かつ活かせる専門技術者がいない。まさに「宝の持ち腐れ」。そんな大発明品を普及させる入り口の役割を果たしたのが、フクダ電子の創業者:故福田孝氏。

 ことは80年余り前の1939年に遡る。福田氏の「安く、国内でもメンテナンスが可能な心電計が造れないか」という熱い思いが引き金となった。自ら専門知識・技術を習得し、品質にこだわった製造・販売の道を切り開いたのである。

 「循環器系医療電子機器に強み」と指摘される同社はこれを契機に、そうした評価の大きな第一歩を踏み出した。生体検査装置分野では心電計の他にもホルタ記録器(日常生活の心電図を記録する機器)や血圧脈波検査装置、さらには超音波画像診断装置や検査用カテーテル。治療装置分野ではペースメーカー、治療用カテーテルなどが高い評価を受けている。

 過日、フクダ電子に取材を申し込んだ直後に某スーパーに設置されていたAEDが目に留まった。装置の下には「フクダ電子」の5文字が記されていた。ホームページを覗いても「AEDはフクダ電子」と謳われている。

 IR担当者は「一般の方でも使用できる医療機器としてのAEDの認知度を向上させ、より広く普及させることで、循環器系の医療機器メーカーとして1人でも多くの方の命を救いたいという思いから」と語った。

 そんなフクダ電子が、在宅用医療機器分野に進出したのは1988年のこと。在宅用人工呼吸器・CPAP(睡眠時無呼吸症候群の治療にも使われる)・ASV(マスク式人工呼吸器)などで始まり、より存在感を高めたのは2002年。酸素濃縮装置の自社開発だった。在宅分野での事業展開にも弾みがついた。

 同社に詳しいアナリストは「フクダ電子の強みは、地域密着型販売・サービスの提供に求められる」と指摘する。具体的には心電計などの製品を取り扱う拠点が全国に103。在宅サービスを提供する拠点が123拠点設営されている。それぞれが予防検査・治療・経過観察に携わりクロスセルを軸に成長を遂げてきた。

 現政権は今後の治療について「入院」から「在宅」への移行を推進する姿勢を見せていることから、フクダ電子でも「在宅医療機器」分野の比率向上が見込まれるが、こんな方向を知ると医療用機器で一段とフクダ電子の名は高まっていくだろうと捉えられる。「エフノ」。クラウドサービスの提供である。在宅・介護・ヘルスケアなど検査を一元管理できるクリニック向けの展開だ。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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