生命起源の手掛かりとなるか 隕石中のシアン化合物 NASAの研究

2019年6月27日 17:14

印刷

初期の地球の様子を描いた想像の様子 (c) NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

初期の地球の様子を描いた想像の様子 (c) NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab[写真拡大]

 シアン化合物も一酸化炭素も人間にとって猛毒であるが、地球がまだ微惑星の衝突を頻繁に受けていたころは、これらの猛毒物質も豊富に存在していた可能性があることを、NASAとボイシ州立大学の研究チームが明らかにした。

【こちらも】東工大など、生命誕生に関する新たな仮説を提唱

 シアン化合物も一酸化炭素も、炭素が豊富な隕石中で別々に見られる化合物だが、それらが鉄と一緒に結合される形で含有された事例は従来なかった。今回の発表は、それらが一緒に結合された形で隕石中に含まれていることを見いだしたことに価値がある。

 そして初期の地球上でもそれらが豊富に存在し、まだ生命が誕生する前の期間に、偶然アミノ酸を合成するきっかけとなっていたのではないかと、研究チームでは推測している。

 シアン化合物はアミノ酸の原料となる炭素と窒素を含み、一酸化炭素も同様に炭素と酸素を含んでいる。これらが何らかのきっかけでアミノ酸に変化したという推論は、無生物から生物が誕生した原因を説明するのには説得力がある。

 46億年前、地球が誕生して間もないころには微惑星の衝突を高頻度で受け、地表は溶融状態にあり、生命が誕生できる環境にはなかった。それが落ち着いたのは今から42億年前であるとされており、このころには海があった痕跡もうかがえる。

 しかしながら今からおよそ40億年前に、木星が現在の公転軌道の位置に移動を始めた結果、それより内周を周回する微惑星の軌道が乱され、再び地球は微惑星の衝突を頻繁に受けるようになった。それが落ち着いたのが今から38億年前のことである。

 2016年までは地球上の最古の生物は37億年前のものとされ、微惑星の衝突から地球が解放されておよそ1億年後に生命が誕生したと考えられてきたが、2017年の初めに英国の研究者によって、約40億年前の生命の痕跡を示す化石の存在が発表され、論争を呼んでいる。

 学者たちの間では、最古の地球生命誕生年代が37億年前なのか40億年前なのか確定していないが、いずれにせよ地球が安定期を迎えた直後に生命が誕生していたことは紛れもない事実のようである。

 もしそれが正しいとするならば、無生物から生物を構成する複雑な構造のアミノ酸が自然発生的に合成されるには、様々な偶然が必要となる。そのためには長い時間を要したのではないかと考えるのが自然であり、どうしても短時間で生命誕生につながった要因が見いだせない。

 だが今回の発見で、アミノ酸の原料となりうる化合物が初期の地球に豊富に存在していた可能性が示唆されたため、この情報は、生命誕生の謎を探る有力な糸口になりうるのではないだろうか。生命誕生の謎が解明される日も、意外に近いのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事