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日産の株主総会終了、本音を語り始めた日産とルノー、アライアンスは何処へ向かう?
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25日に開催された日産の株主総会で、注目ポイントは西川社長兼CEO(最高経営責任者)の「私も簡単に経営統合をすることがいいとは思っていない」という発言だ。
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カルロス・ゴーン前会長の衝撃的な逮捕で幕を開けた日産劇場は、ゴーン被告の処遇に拘りを見せていたルノー陣営が、ひとたびゴーン被告の放逐を決定した後は、日産との経営統合へ向けた執念を隠すことがなくなった。
5月中旬にルノーのスナール会長が、日産に対して経営統合を正式に提案したと伝えられている。ルノー側の攻勢に対して、日産は「今はその時期ではない」程度の反応を示すのみで、世間が期待しているような腹の内を見せることはなかった。
ゴーン問題の最大のキモが、あらゆる権力がゴーン被告に集中した「ガバナンス問題」であることに、異論を挟む人はいないだろ。定時株主総会を迎えるにあたって日産の最高首脳陣が考えたのは、如何にして社内の力関係に影響されないガバナンス・システムを構築するかということだった。
そこで日産が導入を目指したのが、指名委員会等設置会社への移行である。各委員会では社外取締役が過半数を占めて、社内の力学に影響されないガバナンス機能を発揮することが期待された。ゴーン事件を教訓にした最大の遺産とも言えるだろう。
ルノーは、日産が立案した委員会にルノーの関係者を押し込むことを求め、要求が受け入れられない場合には、定時株主総会での提案に「棄権する」意向を示した。43%の株式を保有する大株主のルノーが押した横車の破壊力は強く、当初は「ガバナンス強化に逆行する、誠に遺憾だ」とコメントしていた西川CEOだったが、結果的には定時株主総会での指名委員会等設置会社への議決が円滑に進むことを優先し、ルノーの要求を呑んだ。
日産が一方的な敗北を喫したかに見える指名委員会等設置会社案件だが、西川CEOは定時株主総会の中でルノーとの資本関係のねじれに疑問を呈し、経営統合にも率直な疑問を表明して反撃に転じた。特に日産の取締役会で、ルノーと利益が相反する議題を議論する場合には、ルノーの会長で日産の取締役でもあるスナール氏を議論から外すことも表明した。
片や一緒になることを熱望し、片や醒めた目で推移を見つめるカップルに、訪れる結末は千差万別だろうが、”日産とルノーというカップル”にハッピー・エンドを期待することは難しい。押しまくられていた攻勢への反撃に転じた日産が描く展望は見えない。少なくとも、ルノーが期待する結末とは”明らかに”違ってきたようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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