政府が副業推進に転じた理由

2019年5月30日 16:59

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 数年前まで、多くの企業は副業を禁止していた。それは政府も同様で、副業は原則認めていなかった。しかし2018年に、厚生労働省が副業・兼業の促進に関するガイドラインを作成したことにより、世の中の動きは副業推進と向かっていった。これは、今まで副業をしたくても出来なかった人にとっては嬉しいニュースである。

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 だがつい数年前まで副業を認めていなかったにもかかわらず、政府はなぜ副業を推進し始めたのだろうか。そこにはさまざまな理由が存在する。

●終身雇用制度の崩壊

 経団連の中西宏明会長や、トヨタの豊田章男社長らが相次いで言及したことをみても、終身雇用制度が崩壊しつつあるということは周知の事実である。かつてのような経済の急拡大は期待できず、1つの企業で何年働いても大して給料は上がらない。企業が従業員の給料を上げたいと考えても、なかなかそれは難しい。そこで副業を認めれば、個人の収入は増やせるという考えに至るのである。

●労働力人口の減少

 今の日本は、超少子高齢化へ突入している。高齢者はどんどん増え続け、若者の人口は減少の一途を辿っている。こうなってくると働ける人口(労働力人口)は今後ますます減っていく。

 シニア雇用も広まってきているが、それでも限界がある。定年退職の年齢引き上げだけを実施しても、一時的な解決に過ぎない。そこで確実に減少している労働力人口に多く働いてもらい、生産性を高める必要があることから、副業が推進されるようになった。

●企業は定年まで面倒をみられなくなった

 既に触れたように、ほとんどの企業は従業員を定年まで面倒をみる保証が出来なくなっている。つまり自分のことは自分で守れ、ということでもある。

 今の時代、どれだけ大きな会社で安定した経営を保てていたとしても、何があるかわからない。現に大企業といわれる企業が何社も倒産の危機に陥り、実際に倒産した企業も多く存在する。求人難や後継者不在など、最近では人手不足倒産という言葉もよく聞くようになった。

 企業、そして雇用の安定性が失われつつある中、副業を推進することは、個人の雇用と生活を保つ道を広げる、という見方も出来るだろう。(記事:IKO・記事一覧を見る

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