世界初の木製ストローが廃プラ問題を解決? 最先端の廃プラ・イノベーション

2019年5月27日 09:36

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記事提供元:エコノミックニュース

「海洋プラスチック官民イノベーション協力体制」意見交換会にて、世界初の木製ストローや、環境問題について、アキュラホームグループの宮沢俊哉社長と意見を交わす原田義昭環境大臣。

「海洋プラスチック官民イノベーション協力体制」意見交換会にて、世界初の木製ストローや、環境問題について、アキュラホームグループの宮沢俊哉社長と意見を交わす原田義昭環境大臣。[写真拡大]

プラスチックごみによる環境汚染が世界的な問題となっている。とくに海洋汚染は深刻だ。現在、世界の海に存在するプラスチックごみは合計でおよそ1億5000万トンといわれている。数字を見てもピンと来ないかもしれないが、2016年に世界経済フォーラムが発表した報告書によると、2050年には海洋中に存在するプラスチックが重量ベースで魚のそれを超過すると予測されていると言えば、いかに深刻な状況であるかがお分かりいただけるのではないだろうか。

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 とくに日本は 国民一人あたりが排出する使い捨てプラスチックごみの量がアメリカに次いで 世界で2番目に多い国といわれており、2016年だけでも日本国内で発生したプラスチックごみの総量は約899万トンにものぼる。一刻も早い対策が必要なのは言うまでもない。

 プラスチックは自然に分解されるものではない。かといって、焼却処理しようとすれば元々が石油製品のため大量の二酸化炭素を排出してしまう。また、トウモロコシや藻類、タピオカなどを原料に作られるバイオマスプラスチックも、化石燃料を消費しないというだけで、海中に残れば従来のプラスチックと同様で、早く分解されるということはない。つまり、環境のことを考えれば、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)だけでなく、使い捨てプラスチックの使用量自体を減らすほかに道はないのだ。

 日本でも、環境省が今年3月、レジ袋の有料化や使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%削減するなどの数値目標を盛り込んだ「プラスチック資源循環戦略」をまとめており、政府も6月に日本で開催するG20までにプラスチック資源循環戦略の策定を予定しているが、民間レベルでの取り組みも活発になってきている。

 マクドナルドやスターバックスなど、世界中の大手の飲料・外食チェーンではすでにプラスチックストローの使用を廃止するなどの動き盛んになりつつあるが、日本でもすかいらーくホールディングスなどがプラスチック製ストロー使用中止を発表しているが、今後、日本社会全体でこういった廃プラ・脱プラの動きはますます広がっていくと見られている。

 その証拠に、環境省が環境保全への取組み事例を広く募集している「プラスチック・スマートキャンペーン」には、すでに350件を超える応募が寄せられているという。中でも革新的なものと評価され、注目されているのが、木造注文住宅メーカーのアキュラホームグループが取り組んでいる、木のストローだ。

 同社が製作する木製ストロー「AQURAS (アキュラス)」は、間伐材を含む国産材を薄くスライスし、ストロー状に巻き上げたもので、この手法によるストローの開発や量産化は世界初となる。アキュラホームの推計では、プラスチックストローが木製ストローに置き換われば、脱プラになり、プラスチックストローの削減になる他、間伐材の活用促進による森林保全、CO2の削減にもつながるという。環境省でも、この木製ストローの取り組みに大いに興味を示しており、 5 月21日に開催された「海洋プラスチック官民イノベーション協力体制」意見交換会にも、同社代表取締役社長の宮沢俊哉氏が招かれて原田義昭環境大臣と面談し、海洋プラスチックのゴミ問題について意見を交わしている。

 余談ではあるが、このストローに用いられているのは日本の木造住宅建設に欠かせないカンナ削りの技法だ。カンナ削りの技術でつくられた削り華を巻く手法を応用してつくられた木製ストローは、環境問題だけでなく、日本の木の文化や技術力をに伝わるのにも大いに役立つだろう。また、単に廃プラだけでなく、そこにもう一工夫のあるこういったイノベーションが広がれば、日本も排出プラスチック量世界2位という汚名を返上し、世界のプラスチック問題の解決に大きく貢献できるのではないだろうか。

 アキュラホームでは、誰もが日常で使う、使い捨てストローというものを木のストローに変えることで、消費者がこれを手に取った時に、無意識的なプラスチック製品の使用への配慮や、環境問題を考えるきっかけにしてほしいと考えている。(編集担当:藤原伊織)

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