5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (5)

2019年5月16日 11:26

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 今日のテーマは、「オリエンを制するものはプレゼンを制す」です。このコラムでは、私が博報堂時代から今も使い続けている有効なプレゼン術を紹介しています。業種や職種を問わず、どなたでも実践できて成果が出やすい情報です。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (4)

■(5)オリエンで提案をして「答え合わせ」をする

 オリエンを受ける前に担当営業のブリーフィング情報だけで「企画書(課題、戦略、施策)」を作ってしまいます。そしてオリエン当日に提案し、「答え合わせ」をするのです。プレゼン日ではなく、オリエン日にさっそく方向性の「可否」を探るわけですね。

 もしそこで、「正解」をもらえれば、プレゼンまでにチャレンジャブルなB案を考案すれば良い。さらに戦略や企画を深める時間にも使えます。クライアントに怪訝な顔をされても「オリエン内容の理解度を深めるために、あえて考えてきました」と真意を伝えれば良いでしょう。

 大切なことは、形式ばった固い提案をしないこと。先手したことに満足しないことです。
 ブレストするつもりで気楽にアイデアをぶつけ、本音を訊き出し、オリエンシートに書いていない問題点をあぶり出すことが真の目的です。

 オリエンの場をご自身がリードするつもりで話しかけ、追加情報を訊き出してください。同時にクライアントに新しい気づきを与えながら、最速で最適解に近づいていきましょう。

■(6) オリエン後の取材はクリエイターが出向く 

 (5)で書いた「オリエンで提案!」の有無にかかわらず、オリエン後の取材はクリエイターが行くこと。取材を営業だけに託すと「真意」を訊き出せないことがあります。特に新規競合案件の場合は、営業とクライアントが人間関係構築前なので「核心」を話してくれないケースがあります。

 それでも専門家のクリエイターが行くと、すんなり「本音」を話してくれたりします。先方の「意思」や「覚悟」や「社内事情」などが見えてくれば、企画やプレゼン戦略も立てやすい。プレゼン日までにできうることは、全て潰しておきましょう。勝つためです。

■(7)相手部長やキーマンをすぐに名前で呼ぶ。

 オリエンやプレゼンの場では「~~部長」「御社」と言わずに、キーマンを「名前」でお呼びしましょう。キーマンは、「私を見て進行している。わかっているな、この人は。」と思うはずです。

 実効的には、キーマンと対話しようとする積極的なこの姿勢が、プレゼンの場の空気を自動的に支配していきます。キーマンと一対一の関係を築くことで、案件の決裁を速くするのです。

 ただ、初対面のオリエンやプレゼンの場合、上層部の方々との名刺交換や紹介がどうしても「提案後」になりがちです。そうなることを予測して、事前に担当営業からキーマンの名前や情報を訊き出しておきましょう。とにかく「名前」でお呼びして、気持ちよく対話ができる段取りをつけておくこと。表層的なようで、よく効きます。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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