宇宙初期に誕生した銀河は今よりもずっと明るかった NASAの研究

2019年5月10日 20:43

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スピッツァー宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が検出した初期の銀河 (c) NASA/JPL-Caltech/ESA/Spitzer/P. Oesch/S. De Barros/I.Labbe

スピッツァー宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が検出した初期の銀河 (c) NASA/JPL-Caltech/ESA/Spitzer/P. Oesch/S. De Barros/I.Labbe[写真拡大]

 ビッグバン後最初に誕生した星については、現在ほとんど明らかになっていない。米航空宇宙局(NASA)は8日、スピッツァー宇宙望遠鏡が宇宙初期に誕生した銀河が、現在よりも輝いていることを明らかにしたと発表した。

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■宇宙で最初に星が誕生した経緯

 ビッグバン後の初期宇宙は、陽子と中性子、電子だけが存在していた。これらの素粒子は宇宙が高温だったため自由に飛び回っていたが、宇宙の膨張により温度が下がり、陽子と電子が結合して水素原子が形成された。その当時、宇宙には天体が存在しないため、「暗黒時代」と呼ばれる。

 「暗黒時代」ののち、水素原子が再び陽子と電子に分離される「再イオン化」と呼ばれる現象が発生している。最初の天体の放つ紫外線やX線、ガンマ線といった波長の短い電磁波が、中性水素原子から電子を分離しイオン化したという。現在の宇宙はほとんどの水素原子が再イオン化された状態にあり、その後惑星や恒星等の天体が存在する現在の姿になったと考えられている。

 水素原子を再イオン化に導いた最初の天体がいつ誕生したかについては判明していないが、ビッグバンの発生から1億年から2億年後に中性水素ガスで満たされた宇宙から恒星が誕生し、最初の銀河が形成されたと考えられている。

■赤外線観測が明らかにする初期の銀河

 研究グループは、2003年8月に打ち上げられた赤外線を観測するスピッツァー宇宙望遠鏡を利用した。スピッツァー宇宙望遠鏡の目的のひとつは、中性水素原子が再イオン化された時代の天体観測を続けることだ。

 研究グループは、ビッグバン後約10億年以内に誕生した135個存在する初期の銀河を観測した。その結果、観測された赤外線のうち、特定の波長をもつ一部が予想よりも強いことが判明した。この現象は、天体が大量のイオン化光を放った結果だという。

 今回の発見は、水素とヘリウムによって構成された若い大質量星が初期の銀河を満たしていたことを示唆するという。もっともスピッツァー宇宙望遠鏡が観測した銀河は宇宙で最初に誕生した星ではなく、初期の銀河に過ぎない。とはいえ今回の結果が、どのように宇宙が進化したのかに関する詳細を与えるという。

 「どの天体からの光が再イオン化をもたらしたかは観測的宇宙論における最大の未解決問題のひとつだ」と、ジェノバ大学の研究者であるStephane De Barros氏は述べている。

 研究の詳細は、英天文学誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyにて4月4日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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