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ビッグバン直後に誕生した最初の分子を観測 NASA
最初の分子「水素化ヘリウムイオン」が発見された惑星状星雲NCG 7027 (c) Hubble/NASA/ESA/Judy Schmidt[写真拡大]
米航空宇宙局(NASA)は18日、ビッグバン直後に誕生した最初の分子の観測に成功したと発表した。
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■最初に誕生した分子イオン「水素化ヘリウムイオン」
「ビッグバン」と呼ばれる大爆発後に宇宙が指数関数的に膨張したという「インフレーション理論」が現在、宇宙のモデルとして広く受け入れられている。ビッグバン後に原始的な原子から多くの複雑な原子や分子が誕生したが、最初に作られた分子が「水素化ヘリウムイオン」だ。
ビッグバン発生後の初期宇宙は熱く、数タイプの原子しか存在しなかった。そのほとんどが水素とヘリウムだ。水素化ヘリウムイオンは、ビッグバンの発生から約10万年後に水素とヘリウムが結合することで誕生した。水素化ヘリウムイオンが誕生してようやく宇宙が冷却し、形成が始まった。
一旦宇宙が冷却を始めると、水素原子が水素化ヘリウムイオンと相互作用し、水素分子の形成へと導かれる。これら分子が最初の星形成の要因となり、現在では惑星や恒星、銀河といった巨大で複雑な構造をもつまでに宇宙は進化した。
■観測できなかった水素化ヘリウムイオン
1925年の段階で、実験室での水素化ヘリウムイオンの生成に成功していた。水素化ヘリウムイオンは現在の宇宙においても存在するはずだが、これまで発見できなかった。
1970年代後半に入り、地球から2,900光年彼方の「NGC7027」と呼ばれる惑星状星雲を研究する天文物理学者が、天体周辺の環境が水素化ヘリウムイオンの形成につながるとみていた。紫外線放射や年老いた星からの熱が、水素化ヘリウムイオンを形成するのに適切な環境を作るという。
ところが水素化ヘリウムイオンの検出を阻んだのが、惑星状星雲内に存在する多数の他の分子だった。惑星状星雲内に水素化ヘリウムイオンが存在するはずだという段階まで判明したものの、宇宙望遠鏡でさえこの分子を検出することができなかった。
■空飛ぶ望遠鏡が水素化ヘリウムイオンを観測
2016年に、科学者は遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)に着目した。約1万3000メートル上空を飛行するSOFIAは、地球大気圏の干渉を受けるため、宇宙望遠鏡よりも天体観測の環境が悪いと思われる。しかし他方で、SOFIAは移動できるというメリットをもつ。
SOFIAには「GREAT(German Receiver for Astronomy at Terahertz Frequencies)」と呼ばれる高分解能分光計がが、新たに搭載された。GREATにより、水素化ヘリウムイオンから発する赤外線スペクトルの検出が可能になった。ちょうどラジオ番組を合わせるためにチューニングするように、水素化ヘリウムイオンの周波数にチューニングを実施したという。その結果、水素化ヘリウムイオンの検出に成功した。
研究の詳細は、英科学誌Natureにて18日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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