20年振りに紙幣を刷新! 渋沢栄一・津田梅子・北里柴三郎、って誰?

2019年4月9日 20:45

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新1万円札のデザイン案。(画像:財務省発表資料より)

新1万円札のデザイン案。(画像:財務省発表資料より)[写真拡大]

 麻生太郎財務相は9日の記者会見で、1万円札、5千円札、千円札(日本銀行券)を全面的に刷新することを発表した。新紙幣の発行は24年度上期ごろになる見通しで、紙幣の刷新は2004年以来の20年振りとなる。

 新1万円札の図柄となる渋沢栄一は、幕末から明治・大正という日本の激動期に、実業家として辣腕を振るった立志伝中の人物で「日本資本主義の父」とも譬(たと)えられる傑物である。

 日本の経済史を代表する偉人として、1963年発行の千円札の肖像候補として最終選考に残ったこともあるが、この時は伊藤博文が採用されたため陽の目を見なかった。この時お蔵入りとなった千円札のデザインは、「お札と切手の博物館」(東京都北区王子)の展示物として見ることができる。新1万円札の裏面は東京駅丸の内駅舎となる。

 新5千円札の図柄となる津田梅子もまた、幕末から明治・大正の激動期を女性の視点で駆け抜けた教育者で、「女子英学塾」(のちの津田塾大学)の創始者として知られている。8歳の時に女子留学生として渡米するという恵まれた境遇を、その後の教員生活の中で見事に社会に還元した逸材だ。現在の樋口一葉の後を継ぐ形となるが、5千円札の肖像が女性の定位置となるキッカケともなりそうだ。新5千円札の裏面は藤の花である。

 新千円札の図柄となる北里柴三郎も、活躍した時代は幕末から明治・大正と上記2名と重なる。日本の近代医学の父とも呼ばれる存在で、感染症の予防や細菌学の発展に寄与した貢献は大きく評価されている。人類の歴史で最も致死率の高い伝染病として恐れられ、1347年から1353年の流行時期にはヨーロッパの全人口の約3分の1を死亡させたというペスト菌を発見した功績は大きい。新千円札の裏面には葛飾北斎の富嶽三十六景から「神奈川沖浪裏」が採用される。

 今回の紙幣刷新には、「平成」から「令和」への改元による国民心理の高揚機運を更に盛り上げたいとの思惑が垣間見えるが、18年に1698枚に及ぶ偽造紙幣が発見されていることも見過ごせない要因である。

 米国でも13年に、見る向きによって色が変わる特殊インクを使用した新100ドル紙幣を発行し、欧州中央銀行(ECB)もホログラムの入った100ユーロなどの紙幣を刷新する。いずれも最新技術を投入して偽造防止を進めて、通貨の信認を確保することを目的としている。

 日本では現在、官民を挙げてキャッシュレス決済への動きを加速しているが、個々人の価値観にもつながる問題だけに毎年着実な利用アップを目指すしかないのが実情だ。こうした状況を背景にして、偽造防止を徹底して日本銀行券への信頼を不動のものにすることは、当然必要とされることである。

 紙幣の改札は、自動販売機やATM・紙幣識別機等幅広い事業分野の活性化を呼び起こす。景気刺激効果も大いに期待されるところである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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