5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (1)

2019年4月9日 19:53

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 今日は、博報堂の先輩CDたちから継承したプレゼン術を紹介します。広告クリエイター視点の内容になりますが、競合案件、指名案件、事業会社の規模、業種や職種を問わず、どなたでも実践できて成果が出やすい技術情報です。

【こちらも】効果的なプレゼンテーションを実践するためのノウハウ

(1)商品の使用実感をプレゼン冒頭に話す。

 当然のことですが、世に出ている商品・サービスならば、企画前に必ず試してください。良質な商品であれば、プレゼン時にしっかりと「●●がすごい。なぜなら~~だからです」とか、「このブランドの■■が好きでして、▲▲に関わりたいです」と理由付きで《実感》をクライアントに伝えてください。

 「この人、ウチの商品のこと真剣に考えてくれてるんだな…」と思っていただけて、それだけでアドバンテージ。事実を素直に表現すればイイのです。

 ではもし、その商品の機能やサービスがイマイチの時はどうするか?

 その場で先方に告げるのは判断が必要ですが、いずれにしても、ネガポイントや不備の箇所をなるべく早い段階でクライアントに伝え、まずは先方の「商品への対処」を探ります。その点をどう思っているのか。まだ気づいていないのか。開発者に告げたのか。なぜ放置するのか。いつ修整するのか。しないのか。予算がないのか。

 戦略に関わる根幹です。ご自身が出向き、真意が伝わるように直接キーマンに確認し、可及的速やかに、ご自身の考え・戦略を提示してください。指摘は決してネガに働きません。先回りした提案はクライアントにとって有り難いものです。初動が早いほど、新たな「気づき」も生まれやすく、結果、信頼関係も芽生え、前向きな軌道修正がされていきます。たとえ、n=1でも、クリエイターやプレゼンターからの話は傾聴してもらえます(都合のイイ話をしないクリエイターに限ります)。

 先日、某企業からオリエンがありました。ベネフィットのある商品にもかかわらず、諸事情でそれを訴求できないが、それでもなんとか売り上げたい!という内容でした。私は翌々日、ゼネラルマネージャーと本部長に戦略プレゼンをし、その後、なんとか購買に結びつく施策まで辿り着けたわけですが、早い段階での「指摘と提案」、そしてマネージャーさんとの協働がなければ、未達成だったことでしょう。

 プレゼンで重要な点は、自信作の「初案」を突き返された場合、頑なに固持するのではなく、相手の流れに乗って「新案」を出し続けることです。「もう、いい加減にしてくださいっ!」とクライアントに拒否される寸前まで、再考→再提案→再考→再提案……をしつこく続けていけば「最適解」のほうから、あなたに近づいて来ます。ホントですよ。

 若い頃、自分の戦略やアイデアを通すことにこだわり過ぎて最適解に辿り着かなかったケースがありました。たまに思い出す時があります。なぜ、あの時、もっとラクな気持ちで向き合えなかったのかと。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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