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ルノー・日産連合とFCAとの統合は、10年後の「リーマンショックの再来」を予感する
■急ぎすぎるマクロン
一部報道によれば、ルノーは事実上、日産自動車・日本政府の動きを封じて、ルノー・日産・三菱アライアンスを統合して手中に収めると共に、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)も買収統合して、世界最大の自動車企業を誕生させようとしている。これは、日産の動きを封じ込める狙いもあるのだろう。マクロン大統領は、政治生命が掛かっているとしても急ぎすぎだ。おそらくは「製造業」に十分な理解がないのであろう。これは、金融企業の動き方だ。
さて、この動きを、どの様に評価するかが問題だ。またしても、株・金融知識の上での企業連合の組み立てであることは確かだ。考えるべき点は、自動車産業は製造業であって、銀行合併のように「机上論」で考えれば大筋評価できる内容とは世界が違うことだ。ルノー・日産の統合においても、「企画・開発・製造・販売・メンテナンス」など一巡する「ビジネスモデル」全体を視野に入れなければ、テスラの苦難を経験することとなる。10年後の「リーマンショックの再来」を予感する。
■M&Aの限界
現在の自動車産業は、これまでの製造・販売の単純なビジネスモデルではなく、シェアやIoTによる産業革命とも言える激動の中にいる。この動きと、ルノーが考える「統合」の動きが一致しなければ、大惨事となる。自動車産業で大逆転劇となり、ルノーが世界の主導権を握るのか?それとも「弱者連合」とも見える参加企業全体が取り残されて終わるのか?興味が尽きない構想だ。
株式・金融知識で見ると、「1500万台に達する巨大自動車企業」と見えるのであろう。しかし「世界規模のスウィング生産」体制を目指さねばならない現在のネット社会の中で、「苦難の道のり」が見えていないのが明確だ。ルノー・日産・三菱アライアンスの中でも、これを実現できる見通しはない。さらに遅れているFCAを統合しての動作となると、たとえカルロス・ゴーンが独裁体制を敷いていたとしても、実現の可能性は低い。M&Aでの企業拡大の限界が見えていないようだ。
もちろん、株式の上では、アライアンスは実現できるだろう。しかし「大衆向け量産車」を製造・販売する気であるのなら、第4次産業革命の中に消えていくこととなろう。それは、このままの自動車産業の形態、すなわち「所有が主体の市場」が前提であっても、TNGAが目指している開発・製造などの動きと同じ目標を実現することは、テスラがモデル3の量産を軌道に乗せる過程よりも困難であるからだ。
マネーゲームに偏った世界で、自動車メーカーの社員たちだけでなく、世界の人々が翻弄される姿が目に浮かぶ。アメリカの「ラストベルトとトランプの関係」をどの様に理解しているのであろう。10年後の「リーマンショックの再来」を予感する。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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