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働き方改革の本丸は『普通の労働者への社を挙げてのストレス対策』、ヒントはGoogle
昨今、叫ばれている「働き方改革」。何かしなくてはと危機感を募らせながらも、具体策に悩む経営陣は多い。本当の意味での「働き方改革」とは、社員が、自分で目標を設定し、自分らしく働くこと。苦労も多いが、本当の意味で労働できる組織環境を社がつくることではないだろうか。
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■仕事に強いストレスを抱える人の割合
そんななかで注目すべきデータがある。2017年に厚生労働省が行なった「仕事で強いストレス」を感じているかという質問に、ずばり58.6%の労働者が「はい」を記入した。原因を3つ以内で答えてもらったところ、「仕事の質・量」が62.6%で最多となり、「仕事の失敗、責任の発生など」が34.3%で続いた。対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)は30.6%であった。
メンタルヘルス対策に取り組む事業所は労働者50人以上の事業所では8割を超えた。30〜49人は67%、10〜29人は50.2%と中小企業になるほど手落ちとなった。このデータから浮かび上がるのは「普通の労働者」の過重なストレスであり、「普通の会社」のその対応策の緊急性である。ストレス対策はもはや特殊な問題ではない。
だが、「メンタルヘルス対策」と言っても、何をしていいのやら分からない経営者、首脳陣も多いだろう。そこで本コラムでは、その一考をしてみたい。
IT業界の雄Google社では仕事において、自由度が高く、工夫やアイデアが重視され、同時に一定の技能が必要とされる。組織においては極力上下関係をつくらず、民主的な意思決定が重んじられる。では上司は、何をしているのか。それぞれのメンバー=社員が企業理念、つまりー社会の改善(!)―に直接、コミットメントできるような条件をつくることに注力する。採用では、知識や技能に加え、リーダーシップや人格を問い、面接を中心として多面的で慎重な採用を行う。
Google社では最高の上司になるための8つのルールとして以下をあげている。
1.いいコーチであること
2.チームを勢いづけ、マイクロマネジメント(業務のあらゆる手順を監督し、意思決定を一切部下に任せないこと)はしない
3.メンバーの成功に気を配り、積極的に関与する
4.生産的であり、また成果主義であること
5.良いコミュニケーターであること
6.メンバーのキャリア開発を手助けすること
7.チームのための明確なビジョンと戦略を持っていること
8.チームにアドバイスできる技術的な専門知識を持つこと
それに対して、日本のマネジメントはどうだろうか。仕事内容は単純で、マニュアル化され、定量的な指標や規則により従業員の評価が明確に可能となっている。上司は不合理的といえるほどの裁量を持ち、完全なトップダウン。採用、配置に対するこだわりが薄く、大量採用が行われ、個々人の知識や技能、性格等の適正等は採用や配置の際に重視しない。重視するのは、評価や処遇、賃金である。
なんといっても、Googleのようなポジティブな労働観は貧しくなる。競争的な評価や資金管理、そして退職推奨など外発的なインセンティブ、サンクションによって、社員はコントロールされる傾向が強い。そのような環境では、社員同士は敵対性が強くなり、孤立し、過重な競争に陥るだろう。ましてや斬新で、社を変えていくような新しい発想を持っている社員ほどつぶされていく。活性は失われ、惰性に陥る。
本コラムでは具体的なマネジメントまでは触れることができなかったが、おおざっぱには以下の5つの実行を具体例にあげる。
1.チームの健全性を可視化する「組織サーベイ」
2.会社のビジョンや目標を個人を紐づける「OKR」
3.メンバーの心理的安全性を高める「1on1ミーティング」
4.マネージャーを成長させるフィードバック
5.賞賛し合う文化をつくる「ピアボーナス」
Googleの例は、日本のマネジメントが本質的に旧体制であり、抜本から、民主的で自由な会社を築いていく必要性を示しているのではないだろうか。また、社のマネジメントが、そこで働く一社員が、制度によって生かされもして、死にもすることを示しているのではないだろうか。
・参考情報
1. 津崎 克彦(2017年3月) 「ブラック企業」問題とマネージメント」
2. 小林 由佳(2017年) 「職場のポジティブメンタルヘルス:個人と組織のwell-beingを高めるアプローチ」
3. 厚生労働省 平成29年「労働安全衛生調査(実態調査)」より概況の23頁の労働者調査仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項 及び7頁第5表 メンタルヘルス対策への取り組み状況 2017年
4. Googleが実践する「心理的安全性」の高いチームをつくるためのマネジメント(最終閲覧日:2018年02月23日)
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