【2019秋冬ミラノコレ ハイライト3】フェッティシュやダークが浮上するミラノ

2019年2月24日 17:04

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記事提供元:アパレルウェブ

 ミラノコレクション3日目も、「トッズ(TOD’S)」に始まり、「ブルマリン(Blumarine)」、新クリエイティブ・ディレクターによる初のショーを行った「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」、「スポーツマックス(SPORTMAX)」、「エトロ(ETRO)」、「 エムエスジーエム(MSGM)」、「マルニ(MARNI)」、「ヴェルサーチェ(Versace)」など大手メゾンのショーが続いた。
トッズ(TOD’S)


 前回はメンズとの混合ショーだったのが、今回はまたウイメンズのみのショーに戻した「トッズ」。今回のコレクションテーマは“ITALIAN GAZE”。イタリア的視線から見た「トッズ」的アーバンスタイルの解釈、ということか。
 今回のコレクションでは全体的に今のキーワードが満載。例えば、「トッズ」のオープニングには珍しく、今年のキーカラーであるオールブラックやブラック&ホワイトのコーディネートをもってきた。シェイプはボックスシェイプやコクーンシェイプも多く見られ、ニット、トレンチ、テディコートやダウンなどの旬のアイテムやアニマル柄などを多用している。
 アウター類はもちろん、シャツ、パンツ、ドレスにいたるまでのほとんどのアイテムにナッパをふんだんに使用して「トッズ」らしく仕上げている。ナッパはパテントにして表情を変えたり、ベルトや襟などのディテールで遊んだりはしているものの、それ自体を編んだりカットしたりはせず、本質をシンプルに活かしている。
 「エレガンスにはクオリティが必要。TPOによるルールがほとんどない現代のお手軽でスピーディなファッションに置いて、自覚や立ち居振る舞いによって品格に差が出る」というような説明がコレクションノートには書かれていたが、それを身をもって証明するようなエレガンスに溢れるコレクションだった。
「トッズ」2019秋冬コレクション
ブルマリン(Blumarine)


 今シーズンの「ブルマリン」は、まさに原点回帰ともいえる「ブルマリン」の様々な十八番のエッセンスを抽出してさらに濃縮したようなコレクション。真っ赤な大きなバラのモチーフ、レオパードパターン、ブラックシフォン、レースや刺繍使い、大きなリボンにボアやフェザー。デザイナーのアンナ・モリナーリのお気に入りのフェミニンでロマンティックな要素たちが大集合し、パニエスカート、ショーツ、ペンシルスカート、ベアトップドレスにマキシロングドレスなどフェミニンなデザインで仕上げられる。その一方でテーラードジャケットやシガーパンツ、タキシードなど、マスキュリンな相反する要素を入れ込んだり、今シーズンのキーになっているアーガイルチェックを多用するなど、トレンドを意識した要素も。創業者デザイナーだからこそできる、貫録のコレクションだった。
「ブルマリン」2019秋冬コレクション
ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)


 トーマス・マイヤー退任の後、新クリエイティブ・ディレクターに着任したダニエル・リーによる初のランウェイショーを行った「ボッテガ ヴェネタ」。セントラル・セント・マーティンを卒業し、セリーヌのデザインディレクターを務めた新クリエイティブ・ディレクターに大きな注目が集まる。会場はこれまでのブレラ絵画館のクラシックな雰囲気から、アルコ・デラ・パーチェ(平和の門)の広場にビニールハウスを設営した開放的でクリアな空間に。
 そんな舞台演出が物語るかのように、コレクションはかなりコンテンポラリーに一新。とはいえ、そこには「ボッテガ ヴェネタ」の伝統や職人技は持続していて、そのコントラストが強調されている。コレクションのキーワードは“自由、自己表現、センシュアリティへのセレブレーション”。
 各所に登場するのがブランドのDNAであるイントレチャートの技法が活かされたコートやスカート。そしてそのスクエアなイメージを反映したような大きめの四角形のキルティングや、小さな四角いレザーのピースを繋ぎ合わせたような仕上げ。かと思えば、曲線的なラインでボンディングされたようなライダーススーツやジャケットや、胸元やウエスト辺りをカービーにカットしたデザインも登場。それをミリタリー、ライダース、アウトドアテイストのアイテムとコーディネートされている。
 また、アクセサリー類にも同様の仕上げが。というよりも、コートの開閉部分やベルトなどにバッグの金具やハンドルのようなディテールが使われていることからも、アクセサリーの仕上げで洋服が作られているのかも。
 若いデザイナーの着任によって一新され大成功を収める老舗ブランド達も多い中、「ボッテガ ヴェネタ」の今後が期待される。
「ボッテガ ヴェネタ」2019秋冬コレクション
エトロ(ETRO)


 今回は、長く会場にしていたモダンな建物のスケート場から、プッチーニを始めとする著名音楽家たちを輩出した歴史あるミラノ音楽院に会場を行ってショーを行った「エトロ」。また、エントランス部分には、「エトロ」を象徴するアルニカのトランクたちが積み上げられていて今回のコレクションが歴史や伝統、品位……、といったものをテーマにしていることを連想させる。
 クリエイティブ・ディレクターのヴェロニカ・エトロは、特に英国を意識したと思われる貴族的で品格のあるマテリアルや色使いでコレクションを構成。「エトロ」の伝統を物語るアルニカを始め、家具に使われているような重厚なジャガード織、ガンクラブチェック、ヴィンテージ風のフラワーモチーフなどを多用。スタイルにおいてもコルセットやガウンコート、マキシドレスなど中世的なイメージからテーラードスタイルやプレッピーにいたるまで様々な時代の正統スタイルが盛り込まれている。だが、テーラードジャケットやクレリックシャツがミニドレスになったり、中世的アイテムがローゲージニットやボクサーショーツとコーディネートされるなど、ヴェロニカの得意なグランジ感覚がミックスされている。
 昨年、50周年を迎えて新たなステージに入った「エトロ」。原点を見つめつつ、常に進化していることを見せつけるようなコレクションだった。
「エトロ」2019秋冬コレクション
 
マルニ(MARNI)


 メンズコレクションの時と同様に、様々な形のスピーカーを積み上げて囲うようにして作られた小さな空間をショーの会場とした「マルニ」。今シーズンのテーマは、“NEUROEROTIK-fantaerotic escape game” 。“幻想的な脱出ゲーム”というサブタイトルに表されるように、頭脳を刺激することで既成概念から“脱出”、つまりこれまでの思い込みを捨てて、エロティシズムやフェミニズムを再考する…、ということらしい。
 ゆえに、フォルム自体はテーラード風のジャケットやコートが、肩口や袖の部分などの縫いが不完全だったり、クラシックなドレスが異素材を集めてピンでとめたような仕上げになっていたり。様々な素材のマキシロングマフラーはベルトで固定されて洋服の一部のようになっていたり、長いチェーンネックレスや体に巻き付けるようなチェーンアクセサリーが多用される。黒、赤などの強い色が使われる中、後半はカラフルなプリントも登場するが、それはぼかしをかけたような画像のようなミステリアスな感じだ。露出しているわけでも体のラインを強調しているわけでもないのに確かにエロティック。これまでの「マルニ」のイメージと大きくかけ離れたような大胆な提案に思えるが、このフェティッシュやダークなイメージというのは今シーズンのキーワードの一つなのかも。
「マルニ」2019秋冬コレクション
ブルガリ(BVLGARI)
 プレゼンテーションも多かった3日目。“折衷的グラム”というテーマで「セルペンティ」の新コレクションを発表した「ブルガリ」。“シネマ”、“コズミック”、“アーバン”という3つの要素から美しい部分を抽出して取り混ぜたイメージで、映画の華やかさに、宇宙のようなミステリアスなエレガンス、そして都会的なモダンさが“折衷”されている。このテーマにも重なるような、ローマの古い建築物をイメージした硬さを感じさせるデザインながら、バッグ自体は柔らかくて優しく、かつ軽いという新コレクション「セルペンティ カボション」がデビュー。ミニ「セルペンティ」も様々なバージョンで登場した。あわせて春夏シーズンから発売される新作、B02バッグも展示された。
ヴァレクストラ(Valextra)




ミラノのショップが建築家ジョン・ポーソンの手によってミニマルでクリーンな新しい空間にリニューアルされ、そのイメージに呼応するようなコレクションを発表した「ヴァレクストラ」。ブランド原点回帰をコンセプトに、ブランドヒストリーを紹介すべく、過去のアーカイブコレクションとリメイクモデルを一緒に展示。当時のデザインは忠実に継続しながら金具、色、チャーム、機能性を加えるポケットなどのディテールが進化した現行モデルとの違いを再発見できる。特に今シーズンの目玉はリローンチされた「セリエS」。1961年にデザインされた、ソフトで丸みのある優しいフォルムのバッグはチャームが変えられたり、ジップをパーソナライズできるなど、現代的にアップデートされている。
 
また、コインケース、カードケースなど「ヴァレクストラ」が特許を取っているアイテムたちもスケッチと共に展示され、まるでミュージアムのように興味深い展示会だった。
ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)


 「ロロ・ピアーナ」は、“着る人が輝きを放つ、自然体の着心地”を重視したコレクションを発表。クオリティの高い素材を使って肌触りや着心地の良さも追求した、エレガンスと快適性のハーモニーを強調している。厚みがありながら軽量なアウター類、内側の肌に当たる部分にカシミアを使用したニット類、カシミアのラップドレス、ドローストリングスパンツなど開放的でリラックス感のあるアイテムも豊富に。キーカラーにはイエロー、グリーン、ローズピンクが使われているが、特に今までになかったグリーンはコレクションにアクセントを加えている。
「ロロ・ピアーナ」2019秋冬コレクション
セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)
 本社工場をイメージした演出で展示会を行った「セルジオ ロッシ」。ラストの置かれたデザインやパターンの部屋、製造ラインの部屋、出荷前の倉庫……、という3つの部屋の雰囲気を再現し、その中に商品が展示されている。今回の目玉は新しくデビューしたライン「セルジオ」。チャンキーヒールとポインティが特徴のアクティブなイメージで、スニーカーも充実。またこのラインのために昔のキャンペーンに使われていたイラストからの引用でこのラインのために新しく作られたロゴがウォールペーパーなどにも使われていた。
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取材・文:田中美貴

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