絶対音感は先天性のものであることが明らかに カナダの研究

2019年2月17日 21:26

印刷

●モーツァルトもベートーベンも絶対音感の持ち主

 「絶対音感」とは、ほかの音と比較することなくある音の高さを認識できる能力を指す。そしてこの能力は、ときに並外れた音楽の才能と関連付けられてきた。バッハ、モーツァルト、ベートーベンは、絶対音感の持ち主であったといわれている。

【こちらも】女性の脳は同年齢の男性より3歳若いことが判明 アメリカの研究

 しかし、この能力を担う脳の領域、能力が先天性か後天性については、これまで明らかにされてこなかった。また、絶対音感の持ち主が全人口のどれほどの割合を占めているのか、およそ何歳ごろから発達が見られるのか、また才能の維持と発達のためにどの程度の音楽教育が必要であるのかなど、不明な点は多い。

 トロント大学とデラウェア大学の共同研究チームは、この「絶対音感」についての最新の研究結果を医学誌『ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス』に発表した。それによると、絶対音感は遺伝学的に先天性のものであることが判明したという。

●具体的な実験方法とは

 研究チームはまず、ボランティアで実験に参加した61人を3つのグループに分けた。

 1つ目のグループは絶対音感を持つ経験豊かな音楽家たち、2つ目のグループは絶対音感はないが経験は豊かな音楽家たち、3つ目のグループは最小限の音楽的スキルのみを持つ人たちである。

 3つのグループに聴覚検査を受けてもらい、さらにMRIを使用して脳のどの領域が活性化しているかを分析した。特に、聴覚情報を受け取る脳の領域である一次聴覚野に注目した。この領域で、周波数をはじめとする音の基本的な要素が識別されることになっている。

 その結果、絶対音感を持つ音楽家はそれではないグループよりも側頭葉の上側頭回に位置する聴覚野の反応が大きいことが判明した。また、絶対音感の持ち主は音の周波数を認識する脳の領域の体積が大きめであることも明らかになった。

●音楽教育の有無は

 研究に参加した絶対音感の音楽家たちのプロフィールを調査したところ、グループの20%は7歳までにまったく専門的な音楽教育を受けていなかった。つまり、遺伝学的な要素が絶対音感の有無の決定することはほぼ間違いないという。しかし、研究者たちはこの能力の発達にはある程度の時間を要するとも推測している。

 同時に、トレーニングや音楽教育は、絶対音感を培うという目的のためにはそれほどの役割を果たさないことも研究で明らかになったことになる。

関連キーワード

関連記事