東北大、ナノの世界での熱発電に成功 IoTの永久電源に不可欠な蓄電も確認

2019年1月30日 11:32

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熱電バッテリー素子の模式図(左図)および原理を示す図(右図)(写真:東北大学の発表資料より)

熱電バッテリー素子の模式図(左図)および原理を示す図(右図)(写真:東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学は28日、高密度ナノチャンネルにおける電解液のイオン伝導を利用することで、温度差から発電し、同時に蓄電する新しい原理のデバイスのプロトタイプを試作し、原理検証に成功したと発表した。

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 物質に温度差をつけると起電力が生じる。ゼーベック効果と呼ばれる熱発電の仕組みだ。2000年以降、この熱発電に関する研究が進みナノメートル(10億分の1メートル)の太さのワイヤ形状では高い発電効率を実現できることが分かってきた。

 このことがシリコンの微細加工技術M、EMS(Micro Electro Mechanical Systems)を使った小さな熱電発電素子の研究開発を加速した。早稲田大学らは2018年6月、体温・大気間のわずかな温度差で発電する熱電発電素子を発明したと発表。IoT (モノのインターネット)時代を支える永久電源の実現に道を拓いた。

 今回の発表は、発電に加えて蓄電も可能な熱電バッテリーだ。IoT時代の有力な永久電源となり得る。

 IoTのセンサーやエッジデバイスの設置個所は用途毎に異なる。明るい場所であれば、太陽電池で発電するのが実績のある構成だが、暗所でも温度差があれば使える発電として熱発電は注目だ。

 技術の詳細は、27日から31日に韓国で開催の「The International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 2019)」にて発表した。

●熱電バッテリーの特長
 10ナノメートル径の貫通穴での電解液イオンの熱浸透流を利用して発電。温度差がない状態では、この貫通穴が電解液のイオンにより、閉じてしまうことを利用して蓄電する。

 熱電バッテリーは、2022年にIoTセンサー給電システムとしてのサンプル提案を目指す。

●熱電バッテリーの原理と実験結果
 電解液が入った容器(セル)を貫通穴(ナノチャンネル)で分割。それぞれのセルに電極が形成される。ここに、温度差を与えると、低温側から高温側にプラスイオンによる熱浸透流が生じる。

 30度の温度変化で 、1平方センチメートル当たり250マイクロワットの出力密度を得る。温度差をなくすと、ナノチャネルが閉じ、48時間以上の時間が経過しても6割以上の電荷を保持する。

 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を担う技術であり、IoT機器の電源としての位置付けを確実にすることに期待する。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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