土星の1日の長さを正確に推定 カギを握る「土星の環」

2019年1月23日 09:38

印刷

土星探査機カッシーニが撮影した土星のC環。土星の自転周期を推定するカギとなる。 (c) NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

土星探査機カッシーニが撮影した土星のC環。土星の自転周期を推定するカギとなる。 (c) NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute[写真拡大]

 地球の自転周期は約23時間56分4秒だが、地球型惑星でない土星の自転周期を求めることは困難だ。米航空宇宙局(NASA)は19日、土星の自転周期が10時間33分38秒であることを突き止めた。NASAが欧州宇宙機関(ESA)と共同で開発した土星探査機カッシーニのデータを用いて研究者が算出したが、そのカギを握るのが「土星の環」だ。

■困難な土星の自転周期の推定

 今回に限らず、土星の自転周期は幾度か推定されている。NASAが1977年に打ち上げた無人惑星探査機ボイジャーからの電波に基づき、1981年に自転周期は10時間39分23秒と推定された。カッシーニによる磁場のデータを用いた推定もこれまでされているが、土星の自転周期は10時間36分から10時間48分までとその値に幅がある。

 土星の自転周期を推定するのが困難な理由は、自転を確認するために、追跡したい目印となる固体が土星の表面上に存在しないことに由来する。

 惑星の自転周期を推定する際、研究者は磁場を利用する。土星同様巨大ガス惑星に属する木星の磁場軸は地球と同じく地軸と連動しないため、惑星の回転に伴い磁場軸が振動し、自転速度を得るために電波周期信号を計測できる。ところが主要成分が水素である土星は磁場軸と地軸がほぼ完ぺきに連動するため、磁場が自転速度を不明瞭にし、その自転周期の推定が困難になる。

■着目された土星の環への重力の影響

 今回土星の自転周期を推定したのが、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の大学院生であるクリストファー・マンコビッチ氏だ。1997年に打ち上げられ2017年に運用を終了したカッシーニは、土星の軌道上にいる間、氷や岩でできた土星の環を詳細に調査した。

 土星の環内で観測される粒子の振動のほとんどは、環外の衛星からの重力の影響によるものだが、土星内部で発生する変位による振動も存在する。土星の環の振動を調べることで、土星内部で発生する変位や構造が明らかになる。土星の自転周期は、明らかになった土星の特徴のひとつにすぎないという。

 研究の詳細は、英天文物理学誌Astrophysical Journalにて17日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事