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日産の西川社長グループとゴーン元会長との、瀬戸際の死闘が始まった! (3) 金融商品取引法違反
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ゴーン容疑者が、拘置理由開示のために開催された東京地裁の法廷で3番目に語ったのは、金融商品取引法違反についてである。東京地検特捜部が最初の逮捕容疑とした事案で、その高額な役員報酬の先送りに社会の関心は一気に集まったが、何故かゴーン容疑者は最後にさらっと説明した。
【前回は】日産の西川社長グループとゴーン容疑者との、瀬戸際の死闘が始まった! (2) 特別背任
要旨は「日産のCEOを務めている時期に、フォード、GMを含めて4社の大手自動車メーカーから非常に好条件のヘッドハンティングを受けた。その際提示された報酬条件を私的に記録していたが、第三者に開示したことはなく、あくまでも自分の個人的な控えであった。取締役たちが、私の退職後の進路について色々な提案をしていたとしても、それらとは何の関係もない。故に検察による訴追は、全く事実を顧みない不当なものだ。退職後の報酬に関する提案書の素案についても、全て弁護士による検討や承認が済んでいると理解していた」ということになる。
この件に関わる報道では、毎期約10億円、総額では約80億円に及ぶ報酬の受け取りを先送りし、有価証券報告書に記載してしていないことが法違反を構成したとされている。注目されるのはゴーン容疑者が、グレッグ・ケリー容疑者に対して「報酬の記載は合法的にやるよう指示していた」と語り、グレッグ・ケリー容疑者も「有価証券報告書への記載は社内で相談した上で、外部の法律事務所や金融庁にも確認した」と話していると伝えられていることだ。
上司が部下に業務上の指示をする場合、「合法的に処理する」のは敢えて念を押すまでもない当然至極のことである。それを「合法的にやるよう指示していた」というところや、確認作業に力を注いでいるところに、大きなポイントが感じられる。触法懸念を感じていたか、「指示していた」というアリバイ作りである。
11年3月期から、年間1億円以上の役員報酬を得ている役員の氏名と報酬金額を、有価証券報告書に記載することが義務付けられた。そして、11年3月の有価証券報告書ではゴーン容疑者の報酬額は8億9100万円と記載された。個別に記載する義務がなかった10年3月の有価証券報告書では、日産の役員全体の報酬が26億円だったのに対して、11年3月には17億円になり9億円も減少している。
日産には報酬委員会がないため、総枠が株主総会で承認された役員報酬を個別に配分するのは、ゴーン容疑者の独断であった。自らの高額な報酬への風当たりを恐れて、自身の毎期の報酬を半減し残りを先送りしたと見られるゴーン容疑者は、退任時に先送りした分を確実に獲得する工作を、グレッグ・ケリー容疑者に指示したのだろうか。ゴーン容疑者が現職のまま退任していたとすると、メモ同然の記録であっても、先送りした報酬を受け取ることに、異論を唱える向こう見ずはいないだろう。筋書き通りに進んでいれば、ゴーン容疑者は先送りした役員報酬に、退職慰労金と功労加算金を上乗せした莫大な金額を、退任時に手にしたはずである。グレッグ・ケリー容疑者はそのシナリオを描くだけのために、日産の代表取締役だったのだろうか?それだけでも十分に不可解な話である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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