「訴訟費用」はどこまでが対象か、米裁判所で議論に

2018年11月29日 21:15

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記事提供元:スラド

headless曰く、  米著作権法505条で民事訴訟の勝訴側が回収できると定める「full costs」の範囲に関し、連邦巡回区第9控訴裁判所の判断を誤りだとする被告側(敗訴)の上告が受理されているが、米政府などが被告側を支持する法廷助言書を提出している(SCOTUSblogThe Register)。

 この裁判はサードパーティーのサポートサービスを提供するRimini StreetがOracleに無断で自社サーバーへコピーしたファイルを顧客に提供していたとして、2010年にOracleがRiminiとCEOを訴えたものだ。一審はOracleが勝訴し、Remini側は総額約1億2,400万ドルの支払いを命じられた。合衆国法典第28編1920条(および1821条)では勝訴した側が回収可能な訴訟費用を指定しているが、連邦地裁ではそれ以外の費用(non-taxable costs)約1,277万ドルについても、505条の「full costs」に含まれるとする判例を引いて支払いを命じた。二審ではReminiがOracleのサーバーから製品を取得した行為を不正アクセスと認めず、判決前利息の利率も修正し、総計4,000万ドル以上を減額。ただし、non-taxable costsに関しては一審判決を支持した。

 米政府の法廷助言書では505条が(1920条で指定されていない)弁護士費用を費用に含めることも可能だと特記していることから、「full costs」の「full」が1920条の指定以外の費目に及ぶことはないなどと主張している(PDF)。言語学者11名は「full」が修飾する単語の意味を拡張しないことや脱語彙化した形容詞として広く使われていること、判事や議会が一貫して専門家証人費を「full costs」から除外していることなどを挙げ、「full」は法律の「costs」の定義を変更しないと主張する(PDF)。

 法律学校の准教授は米国では弁護士費用等を当事者が各自負担してきたこと、non-taxable costsについては法律で明確に指定されている場合のみ回収可能なことなどを挙げ、あいまいな条文に基づいて法外な費用請求を認める控訴裁判所の判断の取り消しを求めている(PDF)。一方、どちらの側にも立たないとする米国知的財産権法協会は、控訴裁判所の判断が費用に関する判決額の変動を増すものだとして505条がnon-taxable costsの回収を認めていないとの判断を求めている(PDF)。

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