スバルは迷走にピリオドを打って、再度スロットルを全開にできるのか?(3-2・迷走)

2018年11月16日 10:46

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 完成車検査の不正問題は、無資格者が有資格者の名前で検査するという無資格検査が発覚して始まった。2017年12月に報告書が国土交通省に提出されたが、無資格者問題を聞き取り調査している中で、一部の検査員が燃費試験の計測データの変更もやっていたと回答したことから、燃費・排ガスデータ問題の究明も並行して始まった。

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 2017年度中に終了予定の社内調査は何故か難航し、4月27日に最終報告書が国交省に提出された。4カ月も掛けて国交省の心象悪化を招いた原因を、外部からうかがい知ることは出来ないが、3月決算を挟む時期であったことを勘案すると、納車に迫られて生産体制の維持に傾斜していたとの見方も可能だ。根本的には、社内では深刻な危機感が共有されていなかったということだろう。

 この遅すぎた報告を受けた国交省が、5月14日~16日に渡って抜き打ち監査を行ったところ、社内調査で把握された案件以外の場合でも、不適切データの取り込みが明らかになった。長期の社内調査の信憑性に疑念を抱いた石井啓一国土交通相から、苦言を受けることになったのは当然の成り行きだ。この時点で、2011年から続いた吉永泰之前社長のCEOと代表権の返上が公表された。

 吉永前社長の気持ちが折れた理由は「社内調査で数多くの弁護士が(検査に携わる社員に)何度ヒアリングしても答えなかったのが、国交省にはこういうことがあった、と回答している。私には非常に無念だ」と述べた言葉に集約される。会社の関係者(弁護士も含めて)に言えないことが、外部(国交省)には言うという現場従業員の鬱屈した心理に、見ようとしてこなかった壁を見たのかも知れない。

 神戸製鋼所から始まった一連の「ニッポンのモノづくりを襲う危機」は、多くのことを押し付けられて抱え込む製造現場と、現場の苦悩を斟酌しようとしない“上から目線”の管理部門との、相互不信に多くの部分が起因しているのではないか。組織的にはどう考えても、管理部門の発言力が優る。製造部門は管理部門から指摘された目標を、何とかしようとするだろう。そこに相互信頼という大前提がなければ、言われっぱなしで聞き流すことにもなりかねない。吉永前社長が危惧すべきは、製造部門と管理部門の乖離だったのではないだろうか。企業の成長戦略では目覚ましい実績を挙げていただけに、社内に隠れた病巣を抉り出せなかったことが切ない。

 9月28日には中村知美社長が出席した記者会見で、ブレーキ検査にも不正行為があったことが公表されたが、そのほとんどが聞き取りによるものであったため、具体的な対象車両の特定には至っていない。

 11月1日には、エンジンの不具合で国内外の約69万台のリコールが発表された。対象となるのは「フォレスター」「インプレッサ」「BRZ」など、12年1月~13年9月に製造された車両で、エンジンの動作に関わる「バブルスプリング」というばね部品が原因となる不具合があったという。すでに社内の関係部門では認識されていたトラブルで、材料に含まれる異物がスプリングの強度に与える影響への配慮が不十分なまま設計されていたという。関連するトラブルが既に94件把握されていたということであり、遠からず公表すべき問題だった。何もなければごくありふれたリコールで終わっていただろうが、今回の一連の流れの中で公表されると、関連付けられた「連想ゲーム」になってしまう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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