株式投資は博打などではない (1)

2018年11月13日 14:34

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 株式投資にリスクはつきもの。「リスクを取りに向かわずして、リターンは得られない」ことも事実。が、株式投資は、決して丁半博打などではない。要はリスクのミニマム化が可能な企業(投資対象株)を発掘し、リスクを最小化しうる投資法を実践することで株式投資は博打の域とは異次元に止揚される。

【こちらも】株式投資で資産を形成する基本

 一例を引く。消防自動車で国内首位(世界的にも屈指)の企業に、モリタホールディングス(以下、モリタHD)がある。同社の株式を2018年3月期の初値(昨年4月の始値)で単元株(最低売買単位:100株)を取得、本稿作成時点(18年10月末)の終値まで保有したとする。買いに要した資金は16万3500円。本稿作成時の株価は2100円、受け取り配当金を加えると、運用成績はプラス約28%。そんなモリタHDの株もこの間、1本調子の右肩上がりの展開だったわけではない。1年強の間には上下動を繰り返している。そして同社株の投資を3年余のスパンで捉えた時、こんな事実が浮上する。16年3月期の始値(15年4月の始値1127円)で100株を取得しここまで保有していると、投資元本はこの間の配当金を加え3年余で90%近い運用成績になる。

 好収益体質企業を中長期に保有することが、株式投資で資産を形成する王道と考える。しかし言うのは容易だが、実行するのは難しいのが現実のようである。

 1986年(昭和60年)から1991年(平成3年)にかけて野村証券の社長を務めた田淵義久から、こう聞かされた。「買うまでは企業の好材料ばかりに耳目を集中し、買った瞬間から悪材料探し・売り場探しに躍起になるのが投資家の大方」、(個人)投資家心理を言い当てた名言であろう。

 だが先に記した事実は作り話ではない。モリタHDの投資成果は、本業の儲けを示す営業利益の堅実な伸びを支えに、リスクをミニマム化する為に投資姿勢を中長期投資に置いた結果といえる。

 相応の背景を有する企業の株式と腰を据えて対峙するという視点から取り組む限り、モリタHDの事例が示すように「株式投資は博打ではない」という見方を理解してもらえと思う。

 では資産形成につながる可能性が高い企業(株)は、どう発掘したらよいのか。企業情報の収集にウノ目タカノ目になることである。証券会社(の営業マン)は最近では随分とスマート?になったようだ。自らの口から「相場観」「銘柄観」を語らない。羹に懲りて膾を吹いているということだろう。命じられたとおりに会社の都合に合った「相場展望」「注目銘柄」を語り、「顧客に損を背負わせ非難を受けた過去の歴史の積み重ねの結果」というしか言葉を知らない。しかし独自の相場観・銘柄を論じられない証券会社の営業マンになんの存在感があるというのか。が、ここでは、そうした点にはあえて目をつむる。

 だが口座を開設している以上、証券会社は大いに活用すべきである。活用価値は多々ある。「投資は自己責任」という常識からいえば、証券会社を徹底活用するのも自己責任をまっとうする手だてと心得る。

 リスクをミニマム化しうる銘柄情報を得るために例えば、「10年(10期)以上に亘って連続増収増益を続けている企業をスクリーニングしてくれ」といった注文を証券会社にぶつけてみることを勧めたい。「前18年2月期まで30期連続して増収(営業)増益を続けた企業に、家具のチェーン展開で知られるニトリホールディングスがある。次いでスーパーのヤオコーも前3月期まで29期連続」といった答えが返ってくるはずである。そうした答えを示せないような証券会社なら、口座を閉めてしまうべきだろう。

 私は「10期以上連続増収営業増益企業」は、株式投資で資産を形成する上の重要なキーワードと考えている。かつてないようなフォローの風に乗り2期・3期連続増収増益になりうることはあっても、10期超ともなれば強固な経営の礎の上に立って初めて可能になるといえるからだ。そうした銘柄を3年前に買いここまで保有しているとどのようなパフォーマンスになるかを試算して欲しい。きっと私の言に頷いて頂けると思う。

 ニトリHDに関してはその経営力が多々紹介されている。そこで次回はヤオコーを例に、長期連続の何故を具体的に検証したい。(敬称、略)

『10期以上連続増収営業増益・主要企業』
ニトリHD
ヤオコー
ドンキホーテHD
ツルハHD
ZOZO
ゲートウェイ
エス・エム・エス
ABCマート
ステップ
カルビー(記事:千葉明・記事一覧を見る

続きは: 株式投資は博打などではない (2)

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