野菜と果物の生産量、全人類の健康を維持するには不足 カナダの研究

2018年11月4日 15:59

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●ガイドラインが推奨する野菜・果物の量と実際の生産量との格差

 カナダのゲルフ大学が科学雑誌『プロスワン』に発表した研究によると、栄養士や医学者が推奨する野菜や果物の量と、実際に地球上で栽培・生産されるこれらの食材との量には大きな差があることが判明した。

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 研究者の1人、エヴァン・フレイザー氏は、現在の農業制度による生産では世界の人口の健康を維持するに足る野菜や果物の不足が顕著だという。一方、穀類、糖類、脂質に関しては、その生産が過剰であることも判明している。

●ハーバード大学が作成した『健康的な食事プレート』をベースにした食材の量

 ゲルフ大学の研究は、ハーバード大学が作成した『健康的な食事プレート』を参照に、人類が健康な生活を維持するに足る食材の量と生産量を比較している。ハーバード大学の研究によれば、毎日の食事のうち、野菜と果物で50%、穀類で25%、良質なたんぱく質で25%を基本に構成することが望ましいとされている。

 これを基準に、2050年に98億人に達する人類の健康のために必要な食糧の量と、世界の農業面積を比較した。

●過剰に生産されている穀類や糖類

 現時点において、穀類や野菜の生産量と実際に必要な量を数字で比較すると、次のようになる。

 穀類は、必要量「8」に対して実際の生産量が「12」。
 野菜や果物は、必要量が「15」に対して生産量は「5」。
 脂質は、必要量「1」に対して生産量「3」。
 良質なたんぱく質は、必要量「5」に対して生産量「3」。
 糖分は、必要量「0」に対して生産量が「4」。

●開発途上国の人々を満たす「穀類」

 とはいえ、フレイザー教授はこの数字はあくまで栄養学的に換算したものであり、実際に穀類の生産が多いのは、飢餓に苦しむ国の人々にとって穀類の生産が最も安易であるという理由にもよるとしている。

 また、先進国も開発途上国の食糧支援を行うにあたり、小麦やトウモロコシの栽培を重視し、野菜や果物生産については二の次となってきたという事情も無視できない。さらに、世界的に脂質、糖分、塩の生産が年々増加し、野菜や果物の生産が縮小されつつあるとフレイザー教授は指摘している。

●耕作面積を減少させることも可能な野菜と果物の生産

 フレイザー教授は、また将来の展望についてこう付け加えている。

 栄養士による理想的な食事のガイドラインに沿って将来的な展望を考えると、野菜や果物生産を増やすことは、世界中の耕作面積を現在よりも5000万ヘクタール減少させることにもつながる。野菜や果物は、穀類の生産や酪農に比べると耕作面積が少なくて済むというのがその理由である。

 国連の統計によれば、2050年には世界の人口は98億人に達するというが、この人口を養うために、また森林の破壊を最小限にとどめるためにも、野菜や果物の耕地を拡大させることは人類の健康と地球の環境のために一石二鳥となる可能性が高いというのが、今回の研究の見解のようだ。

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