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天の川銀河のパルサーが星の終焉のメカニズムを解明 NASA
天の川銀河で最も若いパルサーであるKes 75。青色の天体パルサー風星雲で、紫色の天体が超新星爆発後に発生した星の残滓 (c) NASA/CXC/NCSU/S. Reynolds; Optical: PanSTARRS[写真拡大]
米航空宇宙局(NASA)が運営する観測衛星チャンドラからのデータをもとにした研究により、天の川銀河にある最も若いパルサーが同定された。これにより、星の終末期におけるメカニズムが解明されることが期待される。
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■X線天文学をけん引する観測衛星チャンドラ
NASAが運営する大望遠鏡群のうちのひとつであるチャンドラは、1999年にスペースシャトルコロンビアで打ち上げられた。チャンドラの目的は、X線での撮像により宇宙の構造や進化を理解することだ。
強力な磁場や重力場、爆発的な力がゆらぎを継続すると、物質は数百万度にも及ぶ高温状態になり、X線が放出される。爆発する星やブラックホールから生じる高温のガスを、X線望遠鏡は探知できる。
■超新星爆発後に生じるパルサーの謎
核融合により、太陽のような恒星は光と熱を放射する。恒星は大質量星へと膨張し、核融合エネルギーを使い果たすと、超新星爆発により崩壊する。超新星爆発後に生じる星の残滓である「中性子星」は磁気を帯びて高速で回転、「パルサー」と呼ばれる光を放射する。
1960年代に最初にパルサーを発見したのが、ジョスリン・ベルとアントニー・ヒューイッシュらだ。これまで2000以上ものパルサーが発見されたものの、パルサーの挙動やそれを発生させるメカニズムに多くの謎が残る。
■チャンドラが明らかにした幼年期のパルサー
これらを解く鍵となるのが、チャンドラからの観測データだ。地球から1万9,000光年離れた「Kes 75」と呼ばれる超新星爆発後に生じた残滓を確認、天の川銀河内の最も若いパルサー「PSR J1846-0258」を含むことが、ノースカロライナ州立大学ステファン・レイノルズ教授らの研究グループによって明らかになった。
強い磁場を帯びたパルサーの高速回転は、エネルギーを伴う物質や反物質の風を発生させ、光に近い速度で放出される。これが「パルサー風星雲」と呼ばれる粒子の「泡」だ。
チャンドラから撮像されたKes 75から発生するX線は青く輝き、パルサー風星雲を際立たせる。一方低エネルギーのX線は紫色に輝き、超新星爆発後の残滓を示す。
2000年から2016年のあいだに4回かけて収集されたチャンドラのデータは、時間の経過とともにパルサー風星雲が変化することを示す。パルサー風星雲は1時間に320万キロメートルもの速度で膨張する。
パルサー風星雲が低密度の環境下にあり拡散しやすいため、高速で膨張するのだと研究グループは推測する。超新星爆発後に放出されるニッケルは爆発時の光源でもあり、低密度のパルサーを発生させる。光を放出した後、鉄のガスがパルサー風星雲を充填、ガスの拡散を減衰させるというのだ。この仮説が正しければ、爆発する星やそれにより発生する構成要素が明らかになるのではと天文学者は期待する。
研究の詳細は5月24日、プレプリントサーバーarXivにて公開、Astrophysical Journalにより受理された。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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