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ネアンデルタール人、精密な手作業が可能な技術をもっていた 独大学の研究
●高精度の作業が可能であったネアンデルタール人の「手」
科学雑誌『Science Advences』に掲載された記事によると、ネアンデルタール人は非常に高度な手作業の技術を有していたという。獲物となった肉を切るための精密な道具や装飾品の制作をしていた形跡が、解剖学の分野から明らかになった。これまでのネアンデルタール人のイメージを覆す、最新の研究結果となっている。
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●近年、少しずつ変化した「ネアンデルタール人像」
かつては粗野なイメージがあったネアンデルタール人は、近年の研究で洗練された文化や技術を持っていたことが判明している。抽象的な思考が可能であり、死者を丁重に埋葬し、装飾品で身を飾っていた習慣も持っていたことが報告された。
そして、今回『Science Advances』掲載されたドイツの研究により、生物学の分野からこうしたネアンデルタール人の実態が裏付けられた。
解剖学の分野からネアンデルタール人の手の分析を進めたところ、近代のテーラーや靴職人と同様の作業が可能であったことが判明したのだ。
●職業別に異なる手の腱
ドイツのテュービンゲン大学の研究チームはまず、3Dを使用して職業別に手の腱に関するカタログを作製した。体力も要する石工、大工などの職業、逆に体力はあまり必要としないテーラー、画家、靴職人などがその対象となった。
研究チームは、職業別の手の腱の特徴をデータにまとめた。そして、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカから発見された、保存状態の良いネアンデルタール人の6体の手と照合したのである。
●力仕事も精密な仕事も可能
その結果、ネアンデルタール人の手は、高精度な技術を有する現代の職人のそれと同様の特徴を示した。ネアンデルタール人は、ツールメーカーであるツールユーザーであったことが、手の構造から明らかになったのだ。
参加した研究者は、ネアンデルタール人の手の構造を、解剖学的に分析し再構築することの重要性を強調する。このデータから、彼らが使用していた道具と文化、生産性などの関連性が自然と理解できるからである。ネアンデルタール人の手は大きく力強いというかつてのイメージだけではなく、繊細さと正確さを必要とする動きも熟知していたという事実は、歴史的にも大きな発見といえる。
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