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マラリアを媒介する蚊の絶滅が可能に?新しい遺伝子技術とは
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●マラリア蚊を撲滅するために生まれたプロジェクト
2003年、ロンドンのインペリアル・カレッジで発足した「Target Malaria」のプロジェクトチームは、11世代後に蚊を絶滅させることが可能な方法を発見したと発表した。同プロジェクトは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がスポンサーとなっている。詳細は、国際学術誌『ネイチャー・バイオテクノロジー』に掲載された。
実験室内では、「遺伝子ドライブ」という技術を用いてマラリア媒体蚊の全滅に成功したものの、実際に実施するには環境への問題が残るのではという声もある。
●マラリアの犠牲者は44万5千人
世界保健機関(WHO)のデータによると、2016年にマラリアに感染した人は2億人以上、マラリアが原因で亡くなった人は44万5千人に及ぶ。ここ数年、マラリアの犠牲者は減少を続けてきたが、2016年にふたたび増加した。マラリアにはワクチンが存在しないため、専門家のあいだでは近年、マラリア媒体蚊を根絶する方法が模索されてきた。
●雌の繁殖力を低下させる遺伝子工学
アンドレア・クリサンティ教授率いるプロジェクトチームは、遺伝子を改変させる「doublesex」という方法を発明した。これは、世代ごとに雌の繁殖力が低下するように設計されている。新しい遺伝子ドライブの技術は、この設計が99%次世代に伝えられる。最終的に、7~11世代後にはこの種が絶滅するという仕組みである。
●実用化には時間が必要
マラリアを媒介する蚊は、40種以上存在するといわれている。今回の実験では、その中でも最も強力なガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)が用いられた。そのため、この種の蚊の絶滅は可能であっても、マラリアが全滅することにはならない。
クリサンティ教授は、「今回の実験は、基本的なものにすぎない。我々は、初めて遺伝子の改変という新たな方法で、人体に有害な種を制御することが可能であることを実証した」と語った。しかし、実際に実施するには5年から10年の準備期間が必要ともしている。
●自然のバランスへの影響は不可避か
一方、マラリアの根絶策として期待される今回の研究は、実際に実施されれば自然のバランスが崩れることは不可避であり、環境への深刻な被害をもたらす可能性も否定できない。そのため、一部の学者は研究の凍結を求めている。
いずれにしても、インペリアル・カレッジの研究は、ジカウイルス感染症、デング熱、黄熱など、蚊を媒介される病気に対し、理論的には適用可能ということになる。そのため、科学の分野においてはワクチンや抗生物質と並ぶ発見であると評価する専門家も多い。
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