戸田建設の浮体式洋上風力発電機に期待したい

2018年9月21日 15:35

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 準大手ゼネコンの戸田建設は一口で言うと「真面目で地味な会社」。得意として指折り数えられる学校・病院分野に、それは顕著に見て取れる。ともに相手側の「予算」が前提となるビジネス。要するに採算性の期待は薄い。そんな事業のプレゼンテーションや入札に際して同社では事業部門長が、時として社長が臨むことも少なくない。こうした姿勢がいわば同社の「無形財産」となり、高い信用力となっている。

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 今回俎上に乗せた最大の要因は、昨年11月に「12月に(日本企業として初めて)グリーンボンド債を発行する」とした点にある。実行された。

 グリーンボンド債は、環境問題の解決に対応することに絞り込んだ債券である。2007年に欧州投資銀行によって登場した債券だが、日本の取り組みは明らかに遅れていた。16年段階で約240兆円が世界で発行されていたが、日本では公的金融機関の数千億円にとどまっていた。言葉を選ばずに言えば「欧米諸国向けポーズづくり」のための発行だった。

 戸田建設には16年4月に第1号の「洋上風力発電施設」建設という実績がある。グリーンボンド債の発行は第2号機を長崎県五島市沖合に建設するための資金調達だった。「20年3月期までに200億円を投じ浮体式設備の先々の普及を見据えた施行・ノウハウの取得」を打ち出しているが、それに向けた着実な歩みである。

 同社の決算説明書などには、浮体式洋上風力発電設備が先々収益に及ぼす影響などについては一切触れられていない。だがここにきて低コストを可能にする半潜水型台船を開発「浮体式洋上風力発電の建設が加速する態勢が整った」(アナリスト)と俄かに注目を集め始めている。

 収益動向は着実。前期も「戸田建設らしく、採算重視の受注や海外大型工事の剥落を理由に24%の営業減益(190億円)/67%の最終減益(140億円)でスタートしたが期後半に入り207億円、170億円に上方修正しそれをも上回る着地となった」(同)。今期も「19.8%の増収(5140億円)、1.8%の営業増益(310億円)、12.4%の最終減益(223億円)」で立ち上がった。

 浮体式洋上風力発電は、日本の今後のエネルギー事情を勘案する時ポイントの一つ。着目していきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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