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BMW・新型3シリーズ 2018年10月発表(2) 電子制御と機械式サスペンションの違い
BMW新型3シリーズ。(画像: BMW)[写真拡大]
今回のモデルチェンジで、BMWは3シリーズには先進の電子制御サスペンションと言うよりは、機械式サスペンションの最高峰を目指しているように受け取れる。ドイツの文化的伝統は機械式メカニズムであり、日本車の電子コントロールされたサスペンションよりも、基本は機械式メカニズムの調整だ。機械工業が発達したドイツの車造りは、これが基本になっており、電子制御については日本車の発展を見て遅ればせながら開発したのが実際だった。
【前回は】BMW・新型3シリーズ 2018年10月発表(1)また一歩先の最高の操縦性能を求めて
今日、日本車のハンドリングを見ると「電子コントロールを外したらどうなるの?」と不安を感じるほど、よく電子制御されている。電子制御を外した機械式のままの足回りで乗ってみたいと感じるほどだ。それに対して、ドイツ車の基本は「機械式で出来ることを行い、電子制御でプラスする」イメージを感じる。
今回のBMW・新型3シリーズでは、ダブルスプリングのようだ。ドイツ車のセッティングでは、「街中の細かい凸凹をよく拾うのだが、高速になると路面にへばり付く」といわれたものだ。しかし、最近では「Mでも乗り心地が良い」と言われるように、「細かい凸凹を良く吸収し、なおかつ大きな姿勢変化を押さえてフラットな乗り心地」を提供するようになった。これにはショックアブソーバーの内部の工夫が進んでいるが、ドイツ車は機械式メカニズムで実現することを基本としている。
この特性を持つショックアブソーバーに出会ったのは、すでに20年前ぐらいであろうか、日本のチューナーのショックアブソーバーであった。200km/hでの巡行を想定してスプリングとショックを固めているのだが、街乗りの乗り心地は標準サスペンションよりもむしろ良く、ロールやノーズダイブはかなり抑えられた操縦性能を示していた。そのセッティングが、20年以上たった現在、BMWのMシリーズなどで採用されてきているとの印象だ。
今度のBMW・新型3シリーズでも、やはりその方向でセットアップされてきているようで楽しみだ。また、世界最高峰のハンドリングと称賛されることは間違いあるまい。なぜかハンドリングに関して、世界の自動車メーカに比べてBMWは「考え方が一歩先を行っている」のだ。理由は分からない。「ストロークの後半で累進的なコントロールをしている」としていることに関しても、機械式メカニズムで実現していることを期待したい。それは、セレクトできるサスペンションが多くなっているが、ほんの少しの工夫により、機械式でセレクトの必要がないサスペンションを実現できるからだ。
これは車のサスペンションではないが、ダンパーオイルの通り道の穴に、針を通して、その針の形、太さの形状を変化させることで、制御するものだった。アダプティブダンパーのような効果を、針の形状を変えることだけで作り出す、コストダウンにも有効で、造り方もラインを変える必要もなくシンプルで耐久性も向上できる仕組みだ。この方式は、可動部分を少なくして信頼性を上げることもできるので、機械設計の優れた方向性と考えられてきた。確かに意図できない不意の大きな入力にも確実に反応できるのは、機械式なのだ。
しかし、電子制御がスピードも信頼性も上がってくると、むしろ簡単に安く、高度な制御ができる方法として大量に採用されるようになってきた。プログラムを変えるだけでバリエーションもできるので、スイッチ一つでサスペンションセッティングを変更できる現在のシステムが普及している。私のようにプログラマーではあるが古い人間には、どうしても電子制御よりも機械式のほうが確実で故障がないシステムのように感じてしまうのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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