トリノの聖骸布 拷問に苦しんだ人物の血である可能性

2018年8月10日 19:32

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●議論が絶えない「聖骸布」

 死したイエス・キリストの体を包み、その風貌を映したといわれる聖遺物が「聖骸布」である。長年にわたり、この聖遺物の信ぴょう性をめぐって議論が続けられてきた。聖骸布が存在するイタリアのトリノには、聖骸布に関する研究機関(Centro Internazionale di Sindonologia)も存在する。

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●「偽物」とされた1カ月前の研究

 1カ月ほど前、リバプールジョンムーア大学による聖骸布の調査結果が『Journal of Forensic Sciences』に掲載された。それによれば、聖骸布は中世に作られた「偽物」であるという結果になっている。

 マネキンや実際の人間をモデルに、イエスが槍で突かれた脇腹からの出血状況と、聖骸布に残る血液を高解像度カメラ等の最新機器を駆使して検証したが、一致しなかったという。

●聖骸布から発見されたヘモグロビン

 2015年に、聖骸布は一般公開されている。これを機に、最新の光学技術を使用して聖骸布に付着した物質を調査するプロジェクトも進行した。その結果が、科学雑誌『Applied Optics』に掲載された。

 その結果、聖骸布に付着した「血液」とされる物質から、ヘモグロビンの一種であるメトヘモグロビンの存在が認められたのである。1980年代に実施された調査では、血清や大量のビリルビンが発見されたが、聖骸布の「血」は本物であることが裏付けられたことになる。

●病気か、あるいは拷問か

 胆汁から排出されるビリルビンの存在は、この血液を有していた人が黄疸を患っていたか、拷問で苦しんだことを示しているという。

 つまり、強い殴打を受けると赤血球が破壊され、ビリルビンが大量に放出されるのである。また、聖骸布に残された血液の色もさまざまな議論の対象になってきたが、聖骸布研究機関の研究者パオロ・ディ・ラッザーロ氏は、こう語る。

 「我々が調査の対象としているのは、数世紀も前の血液であり、酸化によって化学変化を起こしたことも考慮に入れなくてはいけない。そのため、黄疸を患っている患者の血液を使用し4年にわたる研究を重ねた」。

●黄疸患者の血液を麻布に浸して調査

 実際に、黄疸の人の血液を麻布に含侵、紫外線を照射してビリルビンとどのような相互作用を起こすのかを観察した。そして、聖骸布に付着した血液の色は不自然ではないことも判明している。

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