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「テレワークできる仕事がない」の意識は変えられるか
政府は五輪期間中の交通混雑を緩和するため、職場以外の場所で働く「テレワーク」の推進を促しており、様々なキャンペーンをおこなっていますが、総務省の「通信利用動向調査」によると、昨年の国内企業のテレワーク導入率は、社員数300人以上の企業では23%だった一方、300人未満では10.2%と、2倍以上の開きが出ました。
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テレワークを導入しない理由を聞いたところ、「テレワークに適した仕事がない」が73.7%と、2位の「情報漏えいが心配」の22.2%を大きく上回り、中小企業では仕事内容を理由に、テレワークがほとんど普及していない実情が浮き彫りになったということです。
これに対して、総務省の担当者は、「試験導入で体験してみることが有効」として、ノウハウが少ない中小企業に、先進企業の労務管理や運用ポリシー、人材活用などの事例や、「在宅勤務可」と入れたことでの応募者増の効果などを周知していくということです。
この話を聞いて、最近は数多くの先進事例が紹介されているにもかかわらず、思いのほか普及がすすんでいないことがあらためてわかりましたが、特に中小企業の実際の現場を見ていると、たぶんそうだろうと思えるようなことはいくつもあります。
私が見ている中で最も多いのは、業務分担や指示命令系統があいまい、コミュニケーションが仕組み化されていないなどから、「顔を見たときに言う」「気づいた時に声をかける」など、お互いが身近な場所にいないと情報共有ができない、イコール仕事ができないということです。
これを変えるには業務の仕分けや業務改革が必要ですが、それをおこなうマンパワーとノウハウがありません。テレワークやモバイルワークは、できるならそれに越したことはないとは思っているものの、そこまで重要とも思っておらず、そんな状況から優先順位は下がってしまいます。
ITリテラシーや環境の問題もあります。共有ファイルのクラウド化程度の話でも、なかなか進められないような会社はまだまだ多いです。
さらに思う難しさは、特に経営者が「一堂に会して」「直接対話して」「話し合いながら」仕事をすることが望ましいと、自身の職業観から思い込んでしまっている場合があることです。経営者自身が経験してきた働き方なら理解できますが、テレワークやモバイルワークとなると、自分自身で積極的に取り入れている一部の人を除き、本音ではそのメリットを理解できません。
これは、例えばSNS利用に関する企業リスクを、SNSを使わない経営者や責任者が理解しようとしても、一般論だけでない本音の部分ではなかなかわからないところがあります。リスクのツボを外していたり、反対に必要以上に怖がって、何でもかんでも禁止したりしてしまいます。やはり自分でSNSを使いこなしてみて、そのメリットもリスクも初めて実感としてわかるものです。
テレワークやモバイルワークでも同じで、一番普及に貢献するのは“経営者自身がそれをやらなければならなくなること”です。
私の周りにいる結構高齢な経営者も、ついこの前まで「在宅勤務なんて・・・」と否定的な話をしていたのに、今となっては「テレワークは効率的だ」「便利な世の中になった」と言っています。自身の病気入院をきっかけに、テレワークで仕事をするようになったところ、思いのほか何でもできて、自分が出社できなくても十分に業務が回ることがわかったからです。
事例やノウハウをレクチャーしていくのは、確かに必要なことですが、テレワーク、モバイルワークをそれだけで普及させるのは、どうも難しそうです。特に中小企業の経営者は、自分の価値観にこだわりがある人も多いので、仕事のしかたの根本にかかわることは、心理的になかなか変えられません。
テレワーク、モバイルワークの普及には、まず経営者自身が試してみるきっかけ作りが、意外に効果があるような気がします。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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