「人手不足倒産」に対して個々の企業ができること

2018年7月19日 10:55

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 帝国データバンクによれば、2018年上半期の「人手不足倒産」の件数が、2013年1月の調査開始以降、半期ベースでは過去最多となっているそうです。
 「人手不足倒産」は、従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産と定義していますが、この前年同期比の増加幅は3半期連続で4割を超え、年間合計で初めて100件を超えた2017年の106件を上回るペースとなっているとのことです。[

【こちらも】深刻な人手不足倒産 2017年度は初めて100件超す

 業種の細分類別で、調査開始からの5年半で累計した件数では、「道路貨物運送」が29件、「老人福祉事業」が26件、「木造建築工事」は23件、「受託開発ソフトウエア」は19件と続き、やはり求人倍率が高く人材に切迫感がある業種が多くなっています。

 様々な調査結果やデータからも、多くの業界で人手不足を訴える企業が増えており、今後も人手不足が深刻化して、小規模企業を中心とした「人手不足倒産」はさらに増加する恐れがあるとして、この記事では、「小規模企業ほど従業員の定着率を高める必要性が高まっている」と締めくくられていました。

 それは確かにその通りで、いま社員の定着を課題として、様々な取り組みをしている企業はとても増えてきています。私のところにもこの手の相談は多くなっていますが、これは口で言うほど簡単なことではありません。

 私も企業の取り組みには様々なアドバイスをしますが、企業にはそれぞれ制約条件がありますから、なかなか思い通りの効果を得られなかったり、効果が出るまでには時間がかかったりします。
 採用している人材自体に問題があることもありますし、会社の事業自体の将来性、やっている仕事自体の面白味、業績とのつながりが無くせない給与水準や待遇条件など、簡単に変えられないことがたくさんあります。

 これらを変えられる余地が少ないのが小規模企業であり、そんな小規模企業ほど、「人手不足倒産」が多いというのも、致し方ないところがあります。
 もっとも、最高の給与水準を用意しても、日数が多くて使いやすい休暇があっても、豪華なオフィス環境であっても、それがどんな有名企業であっても、辞める人は辞めますから、そこに絶対というものはありません。

 「人手不足」にどう対処するか、個々の企業としてできることに、画期的な新しい対策はもうありません。今までやってきたことの延長線上で、さらにプラスアルファを考えるしかありません。

 最近は「この仕事ができる人を雇う」というより、「その人ができる仕事を捻出して与える」など、人材をどう戦力化するかに考え方がシフトしていますし、雇うのではなく請負や業務委託を活用する会社も増えています。勤務時間を柔軟にしたり、在宅勤務を認めたりして、今まで働けなかった人が少しの時間でも働けるような取り組みがされています。
 IT化できるものはそれを進めなければなりませんし、もちろん待遇条件や職場環境を改善し、働きやすい職場を作らなければなりません。それは給料や休みや設備だけでなく、仕事のやりがいや人間関係なども含まれます。

 これらすべての取り組みは、その会社の「企業価値そのものを上げる」ということにほかなりません。
 会社で起こるすべての課題の解決策は、結局はすべてここにかかっているのではないでしょうか。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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