世界遺産「軍艦島」で建造物のモニタリングシステム実証運用が開始

2018年6月26日 11:44

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センサを設置した鉄筋コンクリート造建築物(30号棟)、長崎市端島。(画像:三井住友建設発表資料より)

センサを設置した鉄筋コンクリート造建築物(30号棟)、長崎市端島。(画像:三井住友建設発表資料より)[写真拡大]

 長崎県端島、通称「軍艦島」において建造物のモニタリングシステムの実証実験が開始されるという。実験にあたる三井住友建設が発表した。

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 軍艦島は、「明治日本の産業革命遺産」の一部として、世界遺産の登録を受けている観光名所である。ただし、その実態は基本的には完全に廃墟であった。しばらく以前に観光用の上陸桟橋と歩行ルートが整備された以外には、高層建造物も補強工事などは一切行っておらず朽ちるに任されており、建物によってはいつ倒壊するかも分からないという状況に置かれていたのである。

 さて、世界遺産になったものをいつまでも朽ちるに任せておくわけにもいかなかったのであろう。東京大学地震研究所の楠浩一教授の提唱により、長崎市は軍艦島の整備に乗り出した。特に問題なのが、1916年に築造された日本最古の高層RC住宅である「30号棟」である。

 だがこの建物、既に劣化が酷すぎてもはや補修による保存は困難だと考えられている。つまり、後できることは倒壊の時期の予測だ。今後、「ワイヤレス震動センサによるヘルスモニタリングシステム」により微細な揺れの常時モニタリングを行い、建物の異常を検知させるという。このセンサは、離れた場所からの常時モニタリングを可能とするものである。

 このシステムは、対象構造物の揺れを常時計測し、クラウドに常時アップロードする。そしてその揺れの特徴、固有振動数や震動モードの統計値を常時モニターし、何らかの異常が生じた際には即座にアラートを発する、という仕組みになっている。ちなみにセンサにはバッテリーが組み込まれており、長期間の駆動が可能だ。

 このシステムは、データを蓄積して将来的には橋や、人の住む街の建物にも導入し、インフラ維持管理プラットフォームとして構築していきたいという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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