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時計業界に風穴を開けるノット
時計業界は、セイコー・シチズン・カシオの大手3社によってほぼ寡占状態にある。そんな状況の中で斯界に明るい筋の言葉を借りれば「革命児が登場した」という。創業4年目の2017年11月期で、腕時計10万5,000個・ベルト15万本を販売し「売上高21億円」に達したというのである。企業名はノット、ブランド名はKnot。
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決して特異な機能が付いた腕時計ではない。価格帯はベルトと込々で1万5,000円から2万5,000円水準の代物である。しかし斯界では早くも「第4のブランド」とする見方が高まっている。ノットを評価したい点は、大きく2つある。
ひとつは、既存のメーカー品は「部品メーカー」⇒「組み立て工場」⇒「販売」という流通経路が当たり前で、コストがかさむ(価格が割高になる)構造となっていた。対してノットは「デザイン」「製造」「販売」までを一貫して手掛ける、いわゆるSPA(製造小売り)方式を執り同品質/割安商品を消費者にぶつける形をとっている。
もうひとつは、創業者の遠藤弘満氏のいわば「意地」である。元々はデンマークの腕時計ブランドの輸入販売を手掛けていた。それが突然ある日、その権利を失った。件のブランドがなんの事前通告もなく、外資に買収されてしまったのである。
いまでこそ遠藤氏はSPA方式を「誰でも思いつくビジネスモデル」と語っているが、実はそう容易なことではない。腕時計の心臓部である「動作機構」(ムーブメント)は、大手メーカーの系列企業で作られていたからである。遠藤氏ははじめ海外のムーブメントに目をつけ輸入をして時計メーカーとしての道のりを歩み始めた。が「輸入コスト」という壁が「割安」な腕時計をという方針の前に立ちはだかった。悩んだ。苦しんだ。だが「意地」が予期せぬ方向をもたらした。
大手メーカー系列の「ムーブメント企業」「組み立て企業」から提携しないかという話が転がり込んだのである。系列メーカーも製造コストの安い中国などの出現で、先行きに不安を抱いていたのである。
現在の腕時計のSPA方式は、こうして実現した。
無論、ノットが「第4の腕時計メーカー」たりうる保障はない。が「ギャラリーショップップ」(6都市&アジア圏)で商圏の深耕を図りながら、その好感触から遠藤氏は「中期的に内外100店舗、100万本の売り上げを」とする声も発せられているという。
腕時計業界でも、構造改革が起こっている。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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