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食糧生産が地球環境に及ぼす影響 オックスフォード大の最新研究
●動物性と植物性食品に見られる顕著な相違
オックスフォード大学の研究チームが雑誌『サイエンス』に発表した研究結果は、世界123カ国の3万8千におよぶ農業事業体、そこで生産される40食品が対象となっている。それぞれの食品を生産されスーパーに陳列されるまでに排出される温室効果ガス、水と土壌の使用状況、海洋酸性化、富栄養化などが分析された。これには、包装や輸送手段が消費するエネルギーも含まれている。
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その結果、100グラムのタンパク質を擁する牛肉の生産のためには370平方メートルの土地が必要であり、生産過程において105キロのCO2が排出される。牛肉生産業者の中でも大きな差があり、最も環境に悪影響を与える10%は、影響力が少ない牛肉生産の10%と比較すると12倍の温室効果ガスを排出する。
また、環境への影響力が低い牛肉生産でも、グリーンピースの生産と比較すると36倍の土地を使用し、6倍の温室効果ガスが排出されていることも判明した。
植物性の食品の生産は、動物性の食品と比較すると温室効果ガス排出量は49%少ないのをはじめ、土壌酸性化は50%、富栄養化は49%、水の使用量は19%減少する。
●食糧生産による環境負荷は軽減できるか
研究に参加したオックスフォード大学のジョセフ・プーアは、「食糧生産のために多大な環境負荷を生んでいるが、これは我々のニーズを遙かに超える生産量による結果である。我々の消費方法を変えることで、環境への負荷を大幅に削減することができる」と語っている。
極論をいえば、全人口がヴィーガンの食生活を送り牛肉や酪農製品の摂取がなくなれば、世界中の農地使用量を75%減らすことができ、絶滅に瀕した野生動物を飢えから救う可能性がある。
●環境面と栄養面を考慮した生産計画
すでに2017年、米科学雑誌『ネイチャー・エコロジー&エヴォリューション』に掲載された別の研究では、アメリカにおいて持続可能な飼育モデルを採用するためには、一人あたり毎週200グラムの牛肉が適量であると報告されている。この数値は、将来へ向けての牛の飼育、環境、栄養面を考慮したものとして評価された。
今回発表されたオックスフォード大学の研究は、アメリカの研究よりも対象は広範囲に及んでいるが、目的は同じである。地球の将来を考えるのならば、食卓から生活スタイルを変える必要があるという科学者たちの警鐘は、いずれの研究からも如実に見ることができる。
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