栃ノ心 強さ溢れる新大関への想い 

2018年5月31日 06:40

印刷

 日本相撲協会は30日に行われた臨時理事会において、関脇・栃ノ心(30)の大関昇進を満場一致で決めた。都内にある春日野部屋で使者から昇進の伝達を受けた栃ノ心は「親方の教えを守り、力士の手本となるように精進します」と口上を述べた。

■力強い相撲は横綱にも劣らず

 立ち合いでは真っ向からぶつかっていき、相手を受け止めながら力の限り前へ出る。迫力満点の相撲を取り続けた栃ノ心がついに大関の地位にまで登り詰めた。

 夏場所でもまさに力強さ溢れる相撲を披露し続けてきた。

 初日からただ一人全勝で迎えた12日目の白鵬戦、立ち合いで左上手を掴むとがっぷり四つの体勢から寄り切り、横綱を力で捻じ伏せた。その翌々日、優勝争いの大一番となった鶴竜との一戦では相手のまわし掴みながら押し切ることが出来ず、もろ差しからのすくい投げで敗れるも、横綱を相手に何れの相撲も互いが力を出し切った。直近3場所の合計が37勝と、極めて高いレベルでの大関昇進という成績を裏付けるには十分すぎる程の連日の取り組みだった。

 また、鶴竜には3月の大阪場所で寄り切りにより土をつけており、今場所の内容を踏まえても横綱とも十分に渡り合える存在であることは明らかであり、来場所以降、優勝争いの中心となることを誰もが望んでいる。

■新大関として相撲界、スポーツ界にも影響を

 伝達式後のインタビューでは今後に向け「強い体を作って力強い相撲を取りたい」と抱負を語っている。

 古傷である膝の怪我に悩まされながらも、特に今年に入ってからは高いパフォーマンスをみせ続けてきた。今後は強さだけでなく、土俵内外に渡り多くの影響を与えてくれる新大関としての成長にも期待したい。

 伝達式の口上で「親方の教えを守り」と述べた栃ノ心。

 相撲協会は今なお多くの問題で世間から厳しい視線にさらされており、また昨今の日本のスポーツ界では選手と指導者との間で様々な軋轢が生じることが後を絶たず、存在していたはずの信頼関係が脆く崩れるといった不幸な出来事も少なくない。その中で、今回の栃ノ心の大関昇進、そして口上で語った親方への想いは誰もが忘れかけていたスポーツの原点にもう一度、立ち返るきっかけになるような気がしてならない。(記事:佐藤文孝・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事