日本はキャッシュレス社会へ移行できるのか(5)メガバンク・ゆうちょ銀がQR決済への動きを加速

2018年5月24日 21:57

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 22日の日本経済新聞は、3大メガバンクがQRコードの規格統一に合意したことを伝えている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGはスマホ決済で連携し、支払時に使う「QRコード」の規格を統一して、19年度の実用化を目指すことになった。QR決済に関しては中国が先行しており、やっと日本も追撃する体制を整える。

【前回は】日本はキャッシュレス社会へ移行できるのか(4) メガバンクが「QRコード」の規格統一へ

 QR決済とは、店頭でスマホ(スマートフォン)をかざすと、支払金額が銀行の口座から引き落とされる仕組みのこと。デビットカードの利用にも対応し、デジタル通貨の利用者の場合には、一定額をスマホのアプリでチャージしておくことで、支払時に自動で引き落とせる。3大メガバンクは、地方銀行にも参加を呼びかけ、日本全体でキャッシュレス化を推進して、銀行および小売店の業務効率化につなげる考えだ。メガバンクの規格統一で、日本社会におけるキャッシュレス化の加速が期待される。

 経済産業省は4月11日、「キャッシュレス決済」の比率を40%に高める目標を、2年前倒しして25年に繰り上げた。キャッシュレス決済に馴染んでいる訪日観光客が増加している中、支払時の利便性を向上させ、旺盛な需要を取り込むことを目論んでいる。夏までには産官学合同の協議会を設け、普及策を具体的に検討する。店舗への補助金や、消費者への税金優遇策などを組合わせて、将来的には「キャッシュレス決済」の比率を、80%まで伸ばすことを考えている。

 18日にはゆうちょ銀行が、スマホを使った「ゆうちょPay」という決済サービスを、来年2月に始めると発表した。加盟店での買い物時にアプリでQRコードを読み込むと、登録した口座から決済金額が引き落とされる。同じ仕組みを導入済みの横浜銀行や、ふくおかFG傘下の福岡銀行の加盟店でも利用できる。

 横浜銀と福岡銀の加盟店は現在約500店舗。ゆうちょ銀も加盟店を募り、サービス開始に備える。秋頃には、りそなホールディングス傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行、ふくおかFG傘下の熊本銀行と親和銀行、それに近畿大阪銀行も同じサービスを始める。店側はタブレット端末にアプリをダウンロードして、QRコードを表示する。料金は決済の翌日に、店舗口座に入金される仕組みだ。

 キャッシュレス決済が普及すると、銀行のコスト削減が期待できる。ボストン・コンサルティング・グループの推計では、日本の現金決済比率は65%と高率で、先進国平均の2倍に当たる。輸送費等に掛かる現金決済の費用は、年2兆円と試算されている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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