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「裁量労働制」に必要なのは“時間”よりも“仕事量”の裁量
ある新聞で、雇用に関する専門家が「裁量労働制」についてコメントしている記事がありました。
ニュアンスに違いはありますが、今の延長線上で裁量労働制を拡大していくことには反対している人が多いようでした。
私も様々な会社の現場の実態、実際に起こっている事象を見ている中では、基本的に同じような感覚を持っています。
「“働き方改革”でなく“働かせ方改革”」「定額働かせ放題」「ブラック企業支援」など、きつい批判の言葉が出ていて、推進している人たちはこれを否定しますが、今でも法律違反がたくさんある現状では、このまま進めればさらに悪質な例が増えるのは間違いないと私は思います。
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経営者団体などは、今の案で早く進めたいといっているようですが、それは何らかの経営上のメリットを優先しているからで、必ずしも企業と働く人両方のWin-Winは考えていないでしょう。
なぜそう思うかというと、労働問題を扱う人、現場の働き手に近い人のほとんどが何らかの問題があると言っている一方、経営者団体はそれを見ていないかのように振る舞っているからです。
ただしそれは「今のまま進めたらそうだ」ということで、今後いろいろ修正が施されていくならば、また状況は変わるかもしれません。
ちなみに私は独立事業者なので、働き方としては完全な「裁量労働制」です。そしてその働き方には十分に満足しています。
時間の使い方は本当に自分次第なので、休日や日付を回った深夜に仕事をしていることもありますが、反対に平日昼間に時間が取れることもあります。自分でバランスを取るので不満はありません。
報酬の面では、いろいろな意味で企業勤務の人に比べて不安定なことは間違いありませんが、これは悪い意味ばかりでなく良い意味での不安定もあります。例えば企業勤務の人の給料が、ある日突然倍になることはありませんが、私たちの場合は急な受注で売上が増えるなど、それに近いことがあり得ます。
もう一つ、満足した働き方ができている大きな要因に「仕事量の裁量」があります。私たちは常に「仕事量」「報酬」「時間」を天秤にかけていて、場合によっては「やらない」という選択肢があります。
時間的には厳しいけど、仕事内容が面白そうで経験が積める、報酬が高い、だからやろうとか、反対に報酬は高いが他の条件が悪いからやめようとか、そんなことを考えながら仕事を選択しています。こういうことをすべて含めての“裁量”なのです。
いま行われている、そしてこれから拡大されようとしている「裁量労働制」には、この仕事量と報酬の裁量がありません。ここで、もし報酬の裁量がなくても、それに見合った仕事量かどうかを決める裁量があれば、それは問題にはなりません。だから余計に「仕事量の裁量」は重要です。
しかし、雇われる立場でこのあたりを主張するのは絶対に難しいですし、組織の中で仕事を断ったとして、その後に不利益を被らない保証はありません。これが私たちのような独立事業者では、そんな圧力をかける相手とは取引しなければよいだけのことですから、その点はまったく違います。
「裁量労働制」を進めるならば、本当の意味での仕事の裁量を与えなければ、決してうまくいきません。その裁量には「時間」「報酬」「仕事量」の三つがあり、そのすべてが駆使できなければ「裁量労働制」は機能せず、時間単価が低額な長時間労働を生み出すだけです。
それが都合が良い経営者ばかりでは困りますが、こちらも決してそうではありません。実効性があるより良い議論がされることを望んでいます。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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