歴史的経験則と黒田日銀動向

2018年3月6日 05:24

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 FRBのパウエル議長が、2月27日の米国議会で「利上げベース加速」をあらためて示唆した。EUのドラギECB総裁は「2019年前後には利上げへの転換」を示す発言を、機に触れ折に触れて発信している。パウエル発言を機に再浮上したのが、日銀の「(大金融緩和からの)出口論」発言の時期である。周知の通り継続が固まった黒田東彦・日銀総裁の今後5年間の最大の課題は「出口論」の模索である。ゆえに、浮上の時期が世界の関心を高めている。

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 何故なら過去の経験則は「米国⇔欧州、次いで日本の出口への踏み出し」という経緯の後に待ち受けているものが、「世界の経済・金融の混迷」に繋がることを教えているからである。具体的にはこんな事実である。

★1970年代前半:欧州が72年10月、米国が73年1月に金融緩和策の転換に踏み出した。これに続き日本も73年4月に転換。これが74年以降の世界的不況を産み落とした。
★70年代後半:米国が77年8月、欧州が79年3月、日本が79年4月。80年以降の世界的景気減速に繋がった。
★80年代後半:米国が87年9月、欧州が88年7月、日本が89年5月。やはり90年からの世界的景気減速が起こった。
★90年代後半:米国が99年6月、欧州が99年11月、日本が2000年8月。2001年のITバブル崩壊の引き金となった。
★2000年代半ば:米国が04年6月、欧州が05年12月、日本が06年7月。07年以降のサブプライム危機、そしてリーマン・ショックに晒された。

 そこでだ。欧州に続いて日銀が「転換/出口」への姿勢を見せれば、「危機状況」へのトリガーとなる杞憂である。金融筋の一部には「日銀が出口戦略に動く時期はそう遠くはない」とする見方がある。メガバンクの縮小策⇔経済の血液:金融の細り、という現実がその背景にはある。

 だが黒田総裁は2月28日に国会の場で「正常化(出口)が経済にショックを与えることは避ける」としている。「強力なバックである安倍(晋三)首相に対する苦しいメッセージ」とする見方が強い。民主党政権下で進んだ円高を、安倍首相は黒田日銀と手を組んだ「異次元的金融緩和」で切り返した。(円高に繋がる)出口戦略はいわば「オウンゴール」だからだ。

 安倍・黒田両氏の腹の中を覗きたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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