北極の大気汚染はエコ対策にも関わらず改善されていない? 北大などの研究

2018年1月31日 16:36

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グリーンランド南東ドーム地域でのアイスコア掘削(左)と掘削されたアイスコア(右)。(画像:名古屋大学発表資料より)

グリーンランド南東ドーム地域でのアイスコア掘削(左)と掘削されたアイスコア(右)。(画像:名古屋大学発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学を中心とし、名古屋大学も参加している共同研究グループが、グリーンランドで氷の採掘を行い、その科学的分析から、過去60年分の北極大気環境を割り出した。結果として、産業革命以降に増大した窒素酸化物による北極の大気汚染が、近年(21世紀以後)になってもあまり改善されていない事実が判明したという。

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 北極の大気汚染は、北極硝酸エアロゾルフラックスと呼ばれる。原因は周辺国によるNOx(窒素酸化物)によるものが中心であると見られる。産業革命期以降に生じたものであるが、近年(1970年代以降)、排出規制が進み窒素酸化物の排出そのものは抑えられている。しかしそれにも関わらず、北極の大気汚染がもっとも悪化しているのは1990年代であり、21世紀(2000年以降)においてなお1960年代よりも悪い水準が続いているという。

 エアロゾルは微粒子である。人体に悪影響を及ぼす。また、大きな粒子になると雲を作り、曇りを増やして寒冷化を招くと言う特徴がある。原因はSOx(硫黄酸化物)とNOx(窒素酸化物)である。海洋生物が排出したり、火山から放出されたり、その他もろもろの発生源があるが、その最大のものは産業革命以降の、人類による化石燃料の使用のためであることは疑いがない。

 その期間は具体的には1750年(産業革命の始まり頃)から規制が厳しくなる1980年くらいまでだ。

 なお、NOxの抑制にも関わらずエアロゾルフラックスの量が維持されている原因について、はっきりとしたことはまだ明らかになっていないという。

 本研究の詳細は、2つの論文に分けられ、Journal of Geophysical Research: Atmospheres誌にオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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