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がんの早期発見に挑む、ジャパニーズ・メディカル・パワー!
厚労省の発表による2016年の「人口動態統計(確定数)」を見ると、男女を合計した日本人の死亡原因の第1位が「悪性新生物(ガン)」、2位が「心疾患(心臓)」、3位が「肺炎」、4位が「脳血管疾患」、5位が「老衰」となっている。特にがんは1981年(昭和56年)以降40年間近く、独走のような感じで日本人の死因の第1位を占め続けている。
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このがんに対する日本人の意識は近年大きく変化している。以前は本人に告知することに大きな抵抗があり、医者から告げられた家族が、本人にどのように伝えるかと懊悩することが珍しくなかった。がんの治癒率が余りに低く、告知によって本人が大きなショックを受けることが懸念され、告知というよりは死の宣告のような受け止め方をされていた。
現在は医者が本人に対して”時には”あまりにあっけらかんと「がんですね」と伝えている。背景には、医療の進歩により治癒率が向上していること、QOL(生活の質)という概念が一般的になり色々な治療方法の中から、患者自身が納得できる治療方法を選択できるようになったこと、がんに対する知識が社会に浸透して告知しないまま治療を続けることが困難になってきたことなどが理由と言える。
昔から言われてきた「がんは早期発見、早期治療」は、医療が大幅に進歩した現在においても真理であり続けている。早期発見を可能にする技術開発の現状を追ってみると・・・・
日立製作所は国内で初めて尿に含まれるアミノ酸や脂質の中から、がんの目印となる約30種類の「バイオマーカー」を解析して、乳がんや大腸がんを見つける技術を確立した。今までは医療機関で血液採取を行い検査する必要があったが、自宅で採取した尿を検査機関に送って解析する。18年度に実証実験を始める。
島津製作所は患者の細胞を採取する→専用装置で構成物質を分析する→「病理検査」に活用されるAIが、がんを判別するというシステムの開発を進めている。AIを通さない従来方式では30分必要としていた検査時間が僅か2分に短縮されるという。対象とするがんも肝臓、腎臓、大腸や胃など、相当幅広い。AIを活用した専用装置は20年にも発売されるという。
東レは血液を分析することで13種類のがんを検出する検査薬に目途を付けた。「バイオマーカー」を検出する特殊なチップを用いる。特に乳がんでは94%以上の確率で検出する精度があるという。費用も一般的ながん検査費用が10万円ほどであるのに対して、2万円程度を想定している。
国立がん研究センターは昨年の7月から、血液検査によって膵臓(すいぞう)がんを早期に発見する技術の効果を確認する臨床研究を、鹿児島県で開始した。血液中の「アポリポプロテインA2アイソフォーム」というたんぱく質の濃度変化と早期の膵臓がん発見効果を検証している。膵臓がんには自覚できる明確な症状と言えるものがなく、多くは手術不能な末期の「4期」に見つかっている。早期である「1期」のうちに発見できれば、手術による病巣の切除で5年生存率は45%に上がる。
国内のがん治療費は15年度に3兆5889億円に達し、最近10年間で約1兆円増加したと厚生労働省がまとめている。早期発見と診断の技術が向上することは、増加一辺倒だった治療費の抑制と、患者心理の光明になるものと期待される。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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