税収1000億円増 与党の所得税改革案

2017年12月1日 07:27

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 政府が検討している2018年度税制改正における所得税改革案の全容が明らかになった。目標とする導入時期は2020年1月。所得税の変更で社会保障制度など幅広く影響が出るため通常よりも1年長く準備期間を設ける。今回の所得税改革案は3つの控除を見直し、改革案通りになると税収は1,000億円規模の増額になる可能性があるが、慎重論もあり、調整は難航しそうだ。

 今回の所得税改革の3つの控除見直しのうち1つは年金控除だ。現在は年金以外の所得金額があっても、年金のみでの生活者と同じ年金控除が受けられる。一方で年金控除額は年金収入から決まった割合を掛ける「定率控除」となるため、高額年金者には有利な仕組みとなっている。原案ではまず年金収入だけで1,000万円ある人は控除を頭打ちにする。また年金以外の所得がある場合は所得金額に応じてさらに控除額を縮小することで、20万人程度の年金受給者が増税の対象となる。

 控除見直しの2つ目であるすべての納税者に適用される基礎控除の引き上げ、3つ目の見直しとなる給与所得控除の圧縮と組み合わせることで、一定所得以上の会社員は増税となる。日本の給与所得控除は主要国に比べ会社員が優遇されており、またインターネットの普及や共働きの増加など社会環境の変化もあることから、働き方による税格差の是正が狙い。原案では給与収入800万~900万円より上の人は増税となる一方、自営業者やフリーランスなど請負契約で働く人は減税となる。

 政府・与党は12月の税制改正大綱決定に向け検討に入るが、改革案通りになると1,000億円規模の増税となる。所得税改革では、2014年度は給与所得控除の上限引き下げ、昨年度は高所得者の配偶者控除打ち切りなど「取りやすいところから取る」流れが続いており、今回の改革もその流れは変わらない。「高所得者の狙い撃ち」では働く意識の低下を招きかねず、与党内部でも慎重論が出ている。12月中旬の税制改正大綱決定のため検討に入るが、調整は難航しそうだ。

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