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勝てば官軍の増税論議とも 新目的税の行方は
与党の2018年度の税制改革論議が、22日から本格化し始めた。
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いまメディアで盛んに指摘されているのは「新目的税」の行方。具体的には「森林環境税」であり「観光促進税」。伝えられる範囲でそれぞれを簡単に説明すると、次の様な目的に沿った新税だという。
『森林環境税』―適宜な間伐などの森林環境の整備で温暖化対策を促す。総使用木材比率の7割近くが輸入木材。豊富な国内木材の利用を促すこと等を目的とする。財源は、住民税を支払っている国民一人当たり数百円から一千円程度徴収する金額で賄う。
『観光促進税』―日本を訪れる外国人ばかりでなく、海外旅行をする日本人も対象に1回一千円前後を徴収する。空港内に旅行者に便利な設備を整えることを目的とする。
ただし、記した様な新目的税については異論も多い。例えば租税論を分野とする立教大学の関口智教授は「本当に必要な施策があるのなら、新税を創設する前に優先順位に沿って通常の予算を組み替えて実施するのが筋」とした上で、「基幹税議論から逃げ、特定の目的のために税を取るという仕方は政治の怠慢だ」と安倍政権批判を行っている。
確かに森林大国・日本をして「輸入木材頼み」としたのは、森林整備を怠り続けてきた為政者達の失策以外の何物でもない。大雨/地すべり/大被害の原因の多くが国土の8割を占める森林の治水能力不足だ。「観光立国」を標榜する以上、そのために必要な資金は通常予算で組み上げるのが常道であろう。巷では「勝てば官軍の増税論議に総選挙の大勝利が背中を押してしまった」とする見方まで出始めている。
そんな見方に接していると、厚労省がガイドライン案を提示した「副業・兼業のススメ」にも、眉に唾したくなってくる。副業・兼業は就業規則で原則禁止としている企業が多い。中小企業庁の調査では認めている企業は全体の14%に過ぎない。が政府は言う。「労働力人口の減少が不可避の中で、積極的に進めるべきだ」と。しかし「進めばそれだけ税収も増える」という、衣の下の鎧が見えてくる気がしてならない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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